北海道の冬は、かつて「こごえた両手に息をふきかけてしばれた体をあたためて」と歌われるほどに寒かった。しかし、今は少し様子が違う。スパイスを効かせたスープにたっぷりの食材がドドンッ、スープカレーの登場だ。その刺激的な味、そ…
画像ギャラリー北海道の冬は、かつて「こごえた両手に息をふきかけてしばれた体をあたためて」と歌われるほどに寒かった。しかし、今は少し様子が違う。スパイスを効かせたスープにたっぷりの食材がドドンッ、スープカレーの登場だ。その刺激的な味、そのボリュームが、体を芯からポカポカと温めてくれるのだ。だからこそ、特に札幌では雪の降る寒い日だって「あの店のスープに君の笑顔が溶ける」なんて歌われるほどに、ハートフルなものになっている。冬だからこそのカレー、札幌のスープカレーの紹介です!
『こうひいはうす』 @中央区
喫茶店で生まれたスープカレーの原点に出合いに行こう
札幌スープカレーの元祖は諸説あるものの、こちらが古参の1軒であるとは間違いない。現在、店を切り盛りする陽さんの父親が昭和52年の喫茶店の開業と同時に、インド料理にヒントを得たサラサラのカレーを食事メニューの看板に据えたのがルーツのひとつだとか。
チキンカレー 850円
「ただ当時は人気がなくて、日に1~2食の注文しか入らなかったそうですよ」と陽さんは笑いながら語ってくれた。さて、そんな老舗の味はひと口目からインパクト抜群。ローストして余分な脂を落とした鶏ガラや昆布の旨みの後から、店でミル挽きしたスパイスの香りがビビッドかつ立体的に広がる。
食べ進むうちにスープに溶け込んだ、飴色玉ねぎの甘みや、ほのかな苦味、渋味も重なり合って、五味が舌をくまなく包み込む。食後はスパイスの余韻をたなびかせるよう、あえて浅めに煎ったコーヒーでほっとひと息。札幌スープカレー巡りは同店から始めてみよう。
[住所]北海道札幌市中央区南20条西15丁目2-3 伏見コーポ1階
[電話]011-561-9115
[営業時間]11時半〜20時(19時半LO)
[休日]水
[交通]札幌市電ロープウェイ入口駅から徒歩3分
『スープカリー スパイス&ミル』 @白石区
新鮮野菜の滋味と麹の風味が広がる 味噌×スパイスの誘惑
当然と言えば当然だけれども、札幌スープカレーとひと口に言っても、その味わいは実に様々だ。市内に約200軒あると言われている専門店の中でも味噌との邂逅を果たしたのは、この店だけかもしれない。そんなメニューが「じっちゃんの百年味噌カレー」。
じっちゃんの百年味噌カレー 1320円
“じっちゃん”とは店主・半田さんの曽祖父で、“百年”は明治41年に彼が山形で醸造所を創業したことによる。ひ孫が作るオリジナルスープは、豚骨を主体に野菜や釧路産の昆布を重ねた、どっしりとしたコクが持ち味。そこへシャープに立たせたスパイス感と、味噌からあふれる麹の熟成した風味が器の中で仲良く手を取り合っている。
さらに味噌と並び、もうひとつテーマに掲げるものが野菜で、妻・愛さんの実家の畑で、種付けや収穫も行なっているそう。野菜の個性に合わせて、煮る、蒸す、揚げると丁寧に甘みや香りを引き出した「野菜たっぷりカレー」も見逃せない。
[住所]北海道札幌市白石区本通11丁目北2-1
[電話]011-846-0009
[営業時間]10時半~15時(14時半LO)、17時~20時半(20時LO)
[休日]火(祝の場合は営業)
[交通]札幌市営地下鉄東西線南郷13丁目駅から徒歩11分
『スープカレー ソウルストア』 @中央区
濃厚系スープの雄 4種の味とトッピングで自分流にカスタム
ラーメンに淡麗系やこってり系があるように、スープカレーも店ごとにタイプが分かれている。自分好みの味を見つけるならば、そこに着目して探すのもひとつの手だろう。地元客を虜にさせるこちらの店は骨太なコクに満ちた濃厚系。
季節の旬菜カリー 1400円
圧力鍋で炊き込んだ鶏ガラやゲンコツ、モミジなどの動物系に、カツオ節や煮干しといった魚介ダシをマッチさせる。どっしりとした旨みの後からダシの素材に使ったゴボウの風味がふわりと漂い、それがどこか奥ゆかしい風情も生んでいる。加えてスープのチョイスが豊富なのもこの店の面白さ。
基本の「クラシック」、そこに豆乳のまろやかさをプラスした「ボッサ」、ココナッツに柑橘の香りでキレを持たせた「サイケ」、さらに四川風の「自家製麻辣醤」と個性あふれる4種類を用意。そこへ具材や香味油、自家製醤などで気分に合わせてカスタマイズすれば、味の幅は無限大。自由度高く楽しめる。
[住所]北海道札幌市中央区南3条西7丁目3-2 FDRESS7 BLD2階
[電話]011-213-1771
[営業時間]11時半~15時LO、17時半~20時半LO
[休日]不定休
[交通]札幌市電資生館小学校前駅から徒歩3分
『スープカレーショップ メディスンマン』 @中央区
シャープな旨さが光る具材たっぷりの1杯に道民も押し寄せる
開店と同時に満席になる市内でも指折りの人気店だ。濁りのない透明なタッチのスープはすっきりとした味わいの中にも素材のダシを重ねたコクと旨みが凝縮。そこへオリジナルのホットスパイスが合わされば、ストレートな辛さや複雑な香りによって、たっぷり入った具材の風味も際立ってくる。また、このスープをアレンジしたラーメン店の『メディスン麺』(札幌市東区)もあり。
シーフードカレー 1410円
[住所]北海道札幌市中央区南12条西10丁目1-18 グッドビル1階
[電話]011-552-5456
[営業時間]11時半~15時、17時~21時半(21時LO)、土・日・祝11時半~21時(20時半LO)
[休日]火・水
[交通]札幌市電中島公園通駅から徒歩8分
『スープカリー エソラ』 @南区
スパイス使いの妙を感じられる3種のスープ
店があるのは繁華街から離れた1軒家で、敷地内にはガーデンショップも併設(冬季は休業)。スープはすっきりビターな「イノセント」に、カシューナッツとココナッツで濃厚に仕上げた「ヒマワリ」、力強いスパイス&ハーブ感の「蘇生」と個性の全く異なる3種類がありどれも完成度高し!スープカレー以外にもインドやスリランカのテイストを取り入れたスパイスカレーも楽しめる。
チキン野菜カリー 1350円
[住所]北海道札幌市南区澄川5条11丁目4-24
[電話]011-212-1520
[営業時間]11時半~20時半(20時LO)
[休日]月
[交通]札幌市営地下鉄南北線自衛隊前駅から徒歩16分
『IN CURRY(イン カリー)』 @西区
スパイス感とコク 均整のとれたスープに具材の旨さも光る
女性店主が作る繊細かつ大胆なスパイス使いのスープカレー。サラリとしたスープを飲めばダシの旨みを感じた後からスパイスの香りが多層的に広がって、どこまでも奥深い。具材の野菜類は全てボイルで仕上げているのも特徴で、ピーマンはシャキッと、ニンジンは甘み豊かにと、それぞれの素材の滋味を引き出している。鮭やラムカリーといった北海道らしいメニューも見逃せない。
鮭・カリー 1480円
[住所]北海道札幌市西区二十四軒3条5丁目9-33
[電話]011-500-2118
[営業時間]11時半~17時(スープが無くなり次第終了)
[休日]月・火
[交通]札幌市営地下鉄東西線琴似駅から徒歩5分
【雪景色を彩る個性豊かな刺激】
本場、札幌でスープカレーを食べ歩いて目からウロコが落ちまくった!まず驚いたのが、そのボリューム。多くの店がラーメン丼くらいの器を使い、チキンレッグや魚介といった主たる具材と共に種類豊富な野菜がどっさりで、スープも並々と注がれているのだ。一般的なカレーはご飯を食べるための“おかず”的な立ち位置だと思うけど、もはやポトフやブイヤベースのようにそれ自体がメインを張っていて、ライス無しでも十分満足できてしまうのだ。
しかもさすが農業王国、野菜自体の風味も甘みも強い上に、各店で素材ごとに調理に工夫を凝らしているので、ゴロゴロ入っていても食べにくさゼロ。むしろご馳走感すらあった。約200店もが軒を連ねる札幌のスープカレー業界は、どこかラーメンシーンと通ずるものがあると思う。そもそもの定義として
(1)サラサラ系スープ
(2)具材がゴロゴロ
(3)スパイスが効いている
この3点なのでアレンジの幅も広い。
「こうひいはうす」のシンプルであっさりとした味を例えるなら、“昔ながらの中華そば”ってイメージだし、しっかりコクを効かせた「ソウルストア」は“家系”の感覚。はたまた「エソラ」のように、多種類のスープを作り分けることで、あっさり系も濃厚系も楽しめるハイブリット店なんかもある。
ちなみに、「メディスンマン」をはじめとした数軒の店では自慢のスープをアレンジしたラーメン店を構えていることもあり、そちらも気になるところ。スパイスの効いたスープを飲みつつ具材をフゥフゥしながら食べていると汗をかくほど身体が温まってくる。寒さ厳しいこの土地で、スープカレーが根付いた理由も納得した。
撮影/鵜澤昭彦、取材/菜々山いく子
※2023年3月号発売時点の情報です。
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