ティモンディ前田裕太の“おとな”入門

【ティモンディ前田裕太の“おとな”入門】第28回 「旅」編(4)人生で一番長い愛媛への旅

ティモンディ前田裕太

いつの間にか「第二の故郷」となっていた愛媛の地 あの時間は二度と戻ってこない。 けれど、大人になった今の自分は、一日中野球に明け暮れていたあの頃と違って、時間に縛られることはない。 金銭的にも自由が利くようになる分、辞め…

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お笑いコンビ「ティモンディ」前田裕太さんの、「目指せ、理想の大人」をメインテーマに掲げた連載コラム。30代に突入した前田さんが「大人」を目指して過ごす日々を、食・趣味・仕事など様々な視点で綴ってくださいます。連載は、第1・3木曜日に更新です。「(理想の)大人ってなんだろう?」を一緒に考えながら、前田さんの成長を見守りましょう!
高校の3年間、愛媛で暮らしたことは、前田さんにとって「人生で一番長い旅」だったといいます。そして、大人になって改めて愛媛を訪れたことで、あることに気付いたようです。その土地を好きになったり大切に思ったりすることに、その土地にいかに詳しいか、は関係ないのかもしれませんね。

野球がすべてだった高校生活

人生の中で一番長い旅だったのは、高校の間、愛媛に行っていたことだ。

神奈川県の相模原市で生まれ育った私は、プロ野球選手になるために愛媛県松山市にある野球の強豪校、済美高校に入学することにした。

母親は、そんな遠くへ行く必要ないじゃない、と乗り気ではなかったものの、希望に胸を躍らせていた若人にそんな言葉は響く訳もなく、自分の未来のために愛媛の土地に行くことにしたのだ。

私は、絶対にプロ野球選手になるのだ。

そして、練習のないオフの日なんかはリフレッシュするために地のものを食べ、観光名所に行き、愛媛県を満喫するんだ。

そんなことを考えて胸を躍らせていた。

けれど、実際に済美高校へ入学してみると、それどころではなかった。

まずオフの日は無い。

練習も、特に動かす必要もない鉄の塊を上げたり下げたりして身体を鍛え、これでもかと言うほど走っていると気がついたら1日が終わる。

同じような形をした球を何万回も捕ったり投げたりすると、また次の日。

金属でできた棒を途方もない回数振り回し、気がつくと3年間が経過していた。

振り返ると、愛媛での高校生活は、野球生活だった。

野球部を引退しても、寮の門限は18時。

悲しいことに、特に魅力を堪能することもできずに卒業し愛媛の地を離れることになってしまった。

ちょっとくらい愛媛県に詳しくなれるものだと思っていたけれど、高校とグランドと寮にしかいなかった人間が得られる知識なんてたかが知れている。

せめて月に1日でも休みがあったら良かったのに。

いつの間にか「第二の故郷」となっていた愛媛の地

あの時間は二度と戻ってこない。

けれど、大人になった今の自分は、一日中野球に明け暮れていたあの頃と違って、時間に縛られることはない。

金銭的にも自由が利くようになる分、辞めてしまったものをやり直したり、心残りを消化することができる特権がある。

あの時、愛媛を楽しめなかったのなら、今楽しめばいいではないか。

そう考え、愛媛へ旅行に行くことにした。

飛行機に乗り1時間半、バスに数分乗って、当時過ごした松山市に着く。

そこで気づく。

神奈川の地元から離れて愛媛で過ごした旅先だったはずなのだけれど”帰ってきた”という感情で胸がいっぱいになっていたのだ。

過ごしたのはたかだか3年かもしれないけれど、高校時代を過ごした土地は、たとえ野球しかしてこなかった場所だとはいえ、第二の故郷のような場所になっていた。

愛媛の名所は知らないけれど、沢山ランニングした道だったり、朝早く起きて素振りをした学校の体育館下だったり、そういう場所が、私の故郷の愛媛であって、地元と呼びたくなるような愛着を持つ土地になっていたのだ。

そこからは、大人の特権である経済力という兵器を振りかざし、食事に宿泊にと、愛媛の地を満喫しまくった。

知らなかったお店に足を踏み入れ飲食をし、温泉に入って昔ながらの旅館で疲れを癒し、青春の穴を埋めていった。

まだ愛媛県に行ったことのない人がいたのであれば、道後温泉はお勧めしたい。泉質もさることながら、温泉街の情緒も含めて、日本有数の湯元である理由が分かる。

野球というものがなければ、行く着くこともなかった旅先だったけれど、今やラジオで冠番組を持たせてもらったり、愛媛という場所は私のアイデンティティの1つとなっている。

愛媛のように第二の故郷、と呼べるような場所との出会いはないかもしれないけれど、これからの旅で、第三、第四と、故郷と呼べるような素敵な旅先の出会いに期待をして、行ったことのない場所への旅を続けてみたい。

前田裕太(まえだ ゆうた)
1992年8月25日生まれ、神奈川県出身。愛媛県の名門、済美高校野球部の同期である高岸宏行とのお笑いコンビ「ティモンディ」のツッコミ担当。趣味はサッカー観戦、読書。テレビ番組で画力を披露したり、複数メディアでコラムを執筆するなど、マルチな活動で注目を浴びている。

ティモンディ
高岸宏行・前田裕太によるお笑いコンビ。コンビ結成は2015年、グレープカンパニー所属。高岸のポジティブなキャラクターや、二人の野球経験と身体能力などがバラエティ番組で引っ張りだこに。コンビの野球経験をいかしたYouTubeチャンネル『ティモンディチャンネル』の登録者数は約28万人。

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