侍ジャパンがWBCでその称号を手にする10日ほど前、おとなの週末編集部員もまた世界一を目指し、とある挑戦をしていた。それは、2023年3月、茨城県水戸市で行われた「第19回水戸納豆早食い世界大会」。果たして、世界一の称号を得ることができるのだろうか!? 前編後編に分けてお届けする。
画像ギャラリー侍ジャパンよりも先に“世界一”を奪取すべく水戸へ
“世界一”。なんと素敵で、名誉ある称号だろう。侍ジャパンがWBCでその称号を手にする10日ほど前の、快晴に恵まれた2023年3月11日。彼らよりも早く世界一(それも公式なもの!)にならんと、私、『おとなの週末』編集部の武内は何百という梅が咲き誇る、水戸「偕楽園」にいた。
4年ぶりの開催となる「第19回水戸納豆早食い世界大会」(主催・水戸観光コンベンション協会)に出場するためだ。
コロナ禍前に取材した第18回大会で出場選手たちの激闘する様子に胸を打たれ、ぜひあの熱き場に身を置いてみたい、出てみたいと願っていたのだ。普段から早食い気質なので、そこには「納豆ご飯なら問題なし!」、さらに「納豆早食いとはいえ、公が認める世界一になれる!」という慢心や邪念も大いにあったりしたのだけれど。
さて、激戦が予想される大会会場、偕楽園に隣接した千波湖親水デッキに向かうと長蛇の列。受付のために並んでいる出場者たちだ。
応募は270名もあったそうだが、出場できるのは170名のみ(女性30・男性140)。抽選の結果、100名が戦わずして涙を飲んだというわけだ。その無念の涙の分までがんばろうじゃないの!
並んでいる人を見ると明らかに記念出場といった感じの若者やステージで目立ちたいというコスプレの人も。そして18回大会では見かけた大食い系YouTuberがいない。これは……私の中の予感は確信に変わり始めた。
私も受付を済ませると、そこに今大会で食べる納豆を提供してくださっている「だるま納豆」の高野友晴社長の姿を見つけた。
「そうだ、確信を確定に変えるために、早く食べるコツを聞いちゃえ」と、挨拶もそこそこに「納豆をおいしく食べるコツってあるんですか?」と質問をぶつける。
すると「よくかき回してください。パックの中とはいえ、空気に触れているところと触れていないところでは味が違うのです。粘りを出しつつ、おいしさを均一化するためにも少なくても30~40回、時間があれば50回はかき混ぜて欲しいです。タレはそれから加えてください」とのこと。
あの小さなパックの中で味に違いがあるだなんて、知らなかった!
って、違――う。
ついつい何かの企画で役に立つかと、職業病で作っている人のおいしい食べ方を聞いてしまった。早く食べる方法を聞き直さなければ。しかし、社長はご多忙の身。別の方と挨拶を始められてしまった。アドバイスがなくとも早食いには自信がある。ただ、確信は確定ではなく予感にちょっと後退かも。
女性予選スタート! 想像を絶する熱戦に感動
ちなみに予選は10人ひと組で行われる。ご飯310g(女性は210g)に納豆(すでに混ぜられたもので、こちらは男女同量)90g。丼に盛り付けられたそれをいかに早く食べるかで争われるタイムレースで、とにかく早く食べた人から予選通過となる。
予選の組で1位になっても全体として20位では決勝に残れないというシステム。そして男性は2分未満、女性は3分未満に食べ切らないと失格になってしまう。とはいえ、早くに加えて“綺麗に食べる”ことも必要で、丼にご飯や納豆が残っていたり、テーブルにこぼしていたり、頬に納豆やご飯粒をつけていたら完食とはみなされないのだ。
ガガガっと勢いよくかき込んだり、用意されたペットボトルの水で流し込むのはいいが、そのひと粒のために食べ切れていないと判断されるのはつらい。
それに端くれと言えど、私も食の雑誌に関わる身であり、やはりご飯は綺麗に食べなければという矜持もあれば、勝利者インタビューの際に口の周りが納豆のネバネバだらけなんていただけない。あいつ、いつも口の周りを汚して食べ方してんのか? なんて思われたくもない。そんなことを考えていたら11時を迎え、いよいよ大会のスタートとなった。
まずは女性の部から。20代~50代と幅広い年代の方が並ぶ。見るからにやる気のみなぎっている人もいれば、人前に出て恥ずかしがっている人も。ふっ、後者の心構えじゃ世界一は獲れやしないぜ。
そして10名の女性の目の前に、丼に盛られた納豆ご飯が用意された。司会・進行を務めるお笑いコンビ「オスペンギン」さんの合図と同時に、戦いの口火が切って落とされた!
え? あ、そ、そうなんだ……。どの女性も一斉に丼を持ち上げ、ガガガと勢いよくかき込み始めたではないか。
男性がそう食べるのは予想していたが、世界一の称号のためか、はたまた優勝賞品のルンバが欲しいからか、女性もすごい。
どの人も、みるみる納豆ご飯を口の中に詰めていく。そして口いっぱいに頬張った納豆ご飯を水で流し込んでいる人。息が苦しいのか涙目になって小休止している人。みんななりふり構わぬ姿。その迫力に「すげー!」とただただ感動。
この大会に先立って行われた台湾大会で優勝した女性も参加しているのだが、臭豆腐で鍛えられているのか納豆の匂いは平気のようだ。また一度戦った経験があるからか、勢いよくしかし淡々とご飯を口の中に詰めていく。そのまま彼女がこの組のトップとなった。
そして、2組目、3組目と予選が終わっていく。女性は1分30秒~2分くらいで完食できれば予選通過となりそう。3分で食べきれない方も少なくなく、皆かなり悔しそうだ。そして、この悔しさこそ、世界大会なのだ!
女性の予選が終わり、いよいよ男性の予選開始となった。私の番号は155、どうやら最後の方の組で戦うことになりそうだ。後編(4月5日公開予定)に続く!
撮影/谷内啓樹 取材・文/武内慎司(編集部)
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