100年超えの老舗の味

ビールを注げるのは原則マスターだけ 創業114年『ビヤホール・洋食 ランチョン』の“最高のビール”の秘密

創業は1909年、西洋料理店が始まり 『ランチョン』が誕生したのは明治42年(1909年)のこと。駿河台下の一角に、西洋料理店として店を構えたのが始まりだそうだ。「ビールは当初から置いていました。食事は定番は残しつつ、新…

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いまどき、東京で10年続く店だって頭が下がるのに、それどころか歴史を重ね続けること100年以上。長く受け継がれ、愛され続ける老舗には、味そのもの以上に、“語り伝えたい”味があります。寿司、洋食、バー、和菓子に惣菜、定食から駄菓子まで、今に継がれる味、そして新たな時代と共に生きていく味を、たっぷりご披露いたします。連載「100年超えの老舗の味」の今回は、東京・神田神保町『ビヤホール・洋食 ランチョン』店主の情熱とこだわりが生む最高の味わいをご紹介!

歴代マスターの情熱とこだわり、ビールは2回に分けて注ぐ

午後3時。靖国通りに面する建物の2階にある『ビヤホール・洋食 ランチョン』は、ランチが終わり、ゆったりした時間が流れている。お客が座るテーブルの上にあるのは、豊かな泡と黄金の輝きが美しいビール。昼夜通し営業のこちらでは、午後3時といえどお茶の時間ではない。ビールを楽しむ時間なのだ。

注文のたびにサーバーの前に立ち、ビールを注ぐのは4代目マスターの鈴木寛さん。この店でビールを注ぐことができるのは、創業以来、原則マスターだけ。注ぐ直前にグラスに水のベールを張り、泡とビール、絶妙な黄金比でビールを注ぐ。一連の流れは動きに無駄がなく、美しい。

『ビヤホール・洋食 ランチョン』の4代目マスター、鈴木寛さん。通称マルエフと呼ばれる「アサヒ生」を、『ランチョン』ならではの注ぎ方で

「泡は、ビールをおいしく保つための蓋なんです」。ビールを2回に分けて注ぐことで、きめ細やかな泡を作り、おいしさを閉じ込める。この注ぎ方、先代からレクチャーを受けたわけではないという。「幼い頃から父がビールを注ぐ姿を見てましたから、自然と身についたようなものです」。

厳しい常連の目、「若僧が注いだビールなんて」

それでも『ランチョン』のビールを愛して通い続ける常連の目は厳しい。「私の父が代替わりした頃、先代(2代目)を知るお客さんに『若僧が注いだビールなんて』と飲んでもらえなかったことがあるそうです」。お客に認められてこそ、マスターとして一人前。そうして供されるビールは、温度管理も徹底している。

「キンキンに冷えたビールは、うちには存在しません。冷たすぎるとビール本来の味がわからないんです。のど越しだけなら、炭酸水と変わらない。だからうちでは、気候や温度に合わせた適温を調整して出しています」。なるほど、絶妙な温度で注がれたビールは、ふくよかで味わい深い。キンキンに冷えたビール信者だった自分を反省する。

オムレツ(ホワイトソース添え)1200円

オムレツ(ホワイトソース添え)1200円。ふわふわのオムレツにまろやかなベシャメルソース、小エビを添えたオムレツ。おかずとしてもおつまみとしても人気

創業は1909年、西洋料理店が始まり

『ランチョン』が誕生したのは明治42年(1909年)のこと。駿河台下の一角に、西洋料理店として店を構えたのが始まりだそうだ。「ビールは当初から置いていました。食事は定番は残しつつ、新しいメニューも取り入れています」。「新しい」と言っても登場してから20年、30年は経つほど、長く愛されているものが多い。また、洋食メニューに野菜がたっぷり添えられているのも特徴的だ。

ニシンのマリネ 1200円、アサヒ生ビール(480ccグラス) 700円、自家製ロースハム 1100円

(左奥)ニシンのマリネ 1200円、(右奥)アサヒ生ビール(480ccグラス)700円、(手前)自家製ロースハム 1100円 塩気が絶妙なロースハムは、店内で燻製したもの。かむほどに味わい深いのが魅力だ。ほどよく酢で締めたニシンマリネはマスタード入りのマヨネーズをからめるとクリーミー

一緒に供される自家製トマトドレッシングも「おいしい!」と評判になり、販売するようになったという。「ビールがおいしい洋食屋」というスタンスは、100年たっても変わらないのだ。ほかにも、何世代にもわたる常連には、子供の頃は両親に連れられて洋食を食べ、成人してここで初めてビールを飲んだ、なんていうエピソードも。大人も子供も楽しめる魅力が、ここにはある。

『ビヤホール・洋食 ランチョン』広々とした店内。夜にはビールを楽しむお客で満席になる

[住所]東京都千代田区神田神保町1-6
[電話]03-3233-0866
[営業時間]11時半~21時半(21時LO)、土11時半~20時半(20時LO)
[休日]日・祝
[交通]地下鉄半蔵門線ほか神保町駅A5出口から徒歩約1分

撮影/西崎進也、取材/田久晶子

※2023年5月号発売時点の情報です。

※全国での新型コロナウイルスの感染拡大等により、営業時間やメニュー等に変更が生じる可能性があるため、訪問の際は、事前に各お店に最新情報をご確認くださいますようお願いいたします。また、各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いいたします。

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