「独学力」が成績を急上昇させた
なぜAさんは合格圏外から短期間で医学部に通ることが出来たのでしょうか。細かい具体的な方法はいろいろありますが、総じて言うと「独学力」が向上したからです。
ここで言う独学力とは、自学自習で学力を身につける力です。小中高での学科の学習は、新しい単元などを教わる受動的な学習(授業)と、問題演習などを行い、教わったことを消化吸収する能動的な学習(自学自習)とに分けられます。どんなに素晴らしい授業を受けても、それだけでは学力が上がる訳ではありません。教わったことを覚えたり、問題演習をしたりして教わったことを血肉化する自学自習をしてはじめて学力となるのです。ところがこの自学自習についてはそのやり方を教わることはほとんどなく、生徒それぞれに任されているのが実情です。ここに問題があるのです。
受験までの2ヵ月、Aさんには独学力を高める勉強のやり方を指導しました。直接勉強を教えた時間は平均すると1日数時間です。それに対し自学自習の時間はその数倍。その自学自習の効果が高まったからこそ、通常の数分の1の期間で結果を出すことができたのです。
独学力を上げた「知識の体系化」とは
Aさんには受験に必要な全科目(英語・数学・理科)を指導しました。独学力を磨く具体的な方法は多岐にわたり、当然科目によっても異なります。その一方、どの科目にも共通する根源的な学力強化法というものもあります。その一つが、「知識の体系化」です。Aさんが劇的な結果を出せた一番の理由は、この「知識の体系化」を行ったからにほかなりません。
Aさんの場合、受験間際でしたので、教科書で学ぶべき単元はすでに学び終わり、問題演習中心の段階でした。彼女は学校で与えられた課題を真面目にこなしてきていたため、教科書レベルの知識はひととおり頭に入っていました。ところが、それらが断片的で、体系的に結び付いていなかったのです。そのため、解いたことがあるような問題は解けますが、解き慣れていない問題には歯が立たないという状況でした。
そこでAさんが持っていた基礎~標準レベルの問題集を使って、定理や公式の見直しから始め、その分野の全体像がどのようになっているか、どのような典型問題があり、それらがどう結びついているかなどが把握できるように教えました。Aさんは浪人覚悟の受験でしたので、小手先のテクニックなどに走らず、腰を据えて基礎固めから取り組めたのが、結果的に功を奏したのです。
もちろんこの結果はAさんのケースであり、万人に同じ効果を保証するものでないことはご承知いただきたいと思います。