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文豪で軍医の最高位である陸軍軍医総監・陸軍省医務局長まで務めていた森鴎外(1862〜1922年)は、普段どのような食事をしていたのでしょうか。下町風情の残る東京・千駄木の「文京区立森鴎外記念館 」では、鴎外の日記や家族の回想などから、食生活や好んで食べていたものがわかる特別展が、鴎外忌の7月9日まで行われています。衛生学と細菌学を学んだ鴎外は、衛生を徹底し神経質な面もあったようですが、甘いものが大好きで子煩悩だった一面も垣間見れる展覧会となっています。

文豪で軍医の最高位である陸軍軍医総監・陸軍省医務局長まで務めていた森鴎外

衛生学の学びから刺身も火を通す徹底ぶり

鴎外は、食べ物へのこだわりは強くありましたが、美食家というわけではなかったようです。母や妻が作る、淡白な味付けの野菜中心の食事で満足し、お酒は嗜む程度。

唯一のこだわりは、衛生学や細菌学を学んだ観点から、生食を控えていたといいます。生水は飲まず、刺身は軽く火を通し、みかんやりんごを除く果物も煮て砂糖をかけて食べていたようです。

家で作ったもの以外は用心をしていて、”皮を除けば汚くない”という理由からパンはOK。”焼いてあるからバイ菌は死んで、これくらい安くて甘いものはない”ということで、焼き芋を好んで食べていたようです。

上野精養軒などで食べた食事の記録も

中でも興味深いのは、東京の上野恩賜公園内にある日本の西洋料理の草分けの上野精養軒や、アイスクリームを食べていたという東京・銀座の資生堂ソーダファウンテン(資生堂パーラーの前身)など、現存する名店を訪れていたことを表す記述や皇族との御陪食の記録やメニューカードです。メニューカードは、”天皇の料理番”として有名な料理人の秋山徳蔵が持っていたものです(味の素食の文化センター蔵)。

会食も多かった鴎外(前列左から4番目)

家庭では野菜中心の食生活でしたが、外食の際は、上野精養軒でローストビーフやステーキを食べるなど、プロの作った格調高い料理を食べられるお店に行っていたようです。当時の建物の白黒写真や料理のレプリカなど、その時代にまだ珍しかった西洋の料理と文化の発展を感じさせるものとなっています。

本展のメインビジュアルになっている魚やお椀などのカラフルな絵は、鴎外自筆写本の「膳部之事(ぜんぶのこと)」に載っているものを利用しています。

鴎外自筆写本「膳部之事」鴎外が本膳料理の配置や献立、料理作法などを書き写して解説したもの

「膳部之事」は、鴎外の食べたものを記録したものではなく、本膳料理や料理作法を書き写したもので、実際の「膳部之事」とともに全ページを一覧できる展示もあるので、順を追って鑑賞することができます。

「膳部之事」の一部は本展のメインビジュアルに

 
軍医の最高位を務めた森鴎外

森鴎外(本名・森林太郎)は、江戸時代に現在の島根県津和野町を治めていた津和野藩の典医を務める森家の長男として1862(文久2)年に生まれました。

1881(明治14)年、東京医学校(現・東京大学医学部)を卒業後、軍医になり、1884(明治17)年に軍の衛生学の調査や研究のためにドイツへ留学をしました。

 戦地にいる鴎外からの手紙 家族が鴎外に送った菓子などの物資が記されている

1907 (明治40)年には軍医の最高位である陸軍軍医総監・陸軍省医務局長に就任し、1916(大正5)年に退任。翌年、宮内省の帝室博物館総長兼図書頭(ずしょのかみ・図書寮の長官)の職に就き、1922(大正11)年7月9日に60歳で亡くなりました。

鴎外が亡くなるまで家族と30年過ごした東京・千駄木の団子坂上にあった家は、2階から海が見えたことから「観潮楼(かんちょうろう)」と名付けられ、その跡地に「文京区立森鴎外記念館」が建てられています。

団子坂を下った先には、1875(明治8)年から続く「菊見せんべい総本店」があります。鴎外は、書生が集まって話したりするときにこの店のせんべいを買いに来ていたそうです。

【「文京区立森鴎外記念館 特別展 鴎外の食」概要】

【開催期間】2023 年 4 月 8 日~7 月 9 日
【会場】東京都文京区千駄木 1-23-4 文京区立森鴎外記念館 展示室 1、2
【開館時間】10 時~18 時(最終入館は閉館 30 分前)
【休館日】会期中 6 月 26、27 日
【観覧料】一般 600 円(20 名以上の団体/480 円)
【電話】03-3824-5511
※中学生以下無料、障害者手帳ご提示の方と介護者 1 名まで無料 ※文京ふるさと歴史館入館券、パンフレット(押印入)、友の会会員証提示で 2 割引き※その他各種割引あり

【展覧会関連講演会「近代「食」散歩~明治・大正期の料理書をめぐって~」】

さまざまな異国の食文化との出会いの中で、新しい日本の味が模索された近代。鴎外が生きた明治・大正時代の食事情を、当時の料理書を基本資料に読み解きます。
【講師】東四柳祥子氏(梅花女子大学教授)
【開催日時】7月1日/ 14時~15時30分
【会場】文京区立森鴎外記念館 2階講座室
【定員】50名(事前申込制、応募者多数の場合は抽選)
【参加料】無料(参加票と本展観覧券(半券可)が必要)
※申込締切は6月16日必着

【ギャラリートーク】
展示室にて学芸員の展示解説
【開催日時】6月28日(水)14時~(30分程度)
※申込不要(当日の展示観覧券が必要)

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大島あずさ
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