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「バビロンの妖精」バーキンでしか表現できない儚さ

極私的3曲その3は1983年に発売されたアルバムのタイトル曲「バビロンの妖精」だ。原曲はブラームス作曲の『交響曲第三番第三楽章』。セルジュ・ゲンズブールはアメリカのロック/ポップスから多くを学んでいたが、その風土はあまり好まなかったという説もある。

“バビロン”とは“ロサンゼルス”のことで、“バビロンにベイブ(ベイビー)がひとり/洪水にあって溺れそう”(鳥取絹子訳)という歌い出しが、たまらなく儚げだ。この儚さはジェーン・バーキンでしか表現できない類のものだとも思う。

ウィスパー・ボイス

ジェーン・バーキンの歌唱には、よくウィスパー・ヴォイスという表現が使われている。でも、ぼくは単なるウィスパリング(ささやき)やそれに伴うセクシーさだけでは語れない、もっと深い歌心を彼女からいつも感じる。

セルジュ・ゲンズブールは、彼女にウィスパリングとセクシーさを強く求められたと思うのだが、いつしか歌はセルジュ・ゲンズブールから離れて彼女のものだけになった。個人的にはそれは妖精の歌声だったと思っている。

ジェーン・バーキンの名盤の数々

岩田由記夫
1950年、東京生まれ。音楽評論家、オーディオライター、プロデューサー。70年代半ばから講談社の雑誌などで活躍。長く、オーディオ・音楽誌を中心に執筆活動を続け、取材した国内外のアーティストは2000人以上。マドンナ、スティング、キース・リチャーズ、リンゴ・スター、ロバート・プラント、大滝詠一、忌野清志郎、桑田佳祐、山下達郎、竹内まりや、細野晴臣……と、音楽史に名を刻む多くのレジェンドたちと会ってきた。FMラジオの構成や選曲も手掛け、パーソナリティーも担当。プロデューサーとして携わったレコードやCDも数多い。著書に『ぼくが出会った素晴らしきミュージシャンたち』など。 電子書籍『ROCK絶対名曲秘話』を刊行中。東京・大岡山のライブハウス「Goodstock Tokyo(グッドストックトーキョー)」で、貴重なアナログ・レコードをLINN(リン)の約400万円のプレーヤーなどハイエンドのオーディオシステムで聴く『レコードの達人』を偶数月に開催中。最新刊は『岩田由記夫のRock & Pop オーディオ入門 音楽とオーディオの新発見(ONTOMO MOOK)』(音楽之友社・1980円)。

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