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国内外のアーティスト2000人以上にインタビューした音楽評論家の岩田由記夫さんが、とっておきの秘話を交えて、昭和・平成・令和の「音楽の達人たち」の実像に迫ります。連載「音楽の達人“秘話”」の音楽家・加藤和彦の最終回(第5回)は、恒例の筆者による極私的3曲の紹介です。膨大な楽曲の中から何を選んだのか。故人との思い出を交えながら、曲への想いを語ります。

3000もの楽曲を創作

ザ・ローリング・ストーンズやボブ・ディランなどのように60年以上の音楽活動キャリアを持つミュージシャンが増えた今、40年少々の活動キャリアの加藤和彦は、とりわけロング・キャリアと言えないかも知れない。それでもその40年少々の活動歴はとても濃密なものだったとぼくは思う。特にザ・フォーク・クルセダーズ、1回目のソロ活動、サディスティック・ミカ・バンド、そして安井かずみとの結婚から生まれたヨーロッパ3部作『パパ・へミングウェイ』『うたかたのオペラ』『ベル・エキセントリック』までの加藤和彦は特に充実していた。

またこの間、飯島真理の「愛・おぼえていますか」、岩崎良美の「愛してモナムール」、 竹内まりやの「戻っておいで・私の時間」、「ドリーム・オブ・ユー~レモンライムの青い風」、「不思議なピーチパイ」、ベッツィ&クリスの「白い色は恋人の色」など作曲のみに限定しても約3000点に及ぶ楽曲を他のミュージシャンに提供した。あの筒美京平が残した楽曲総数が約2700曲と言われるので加藤和彦がいかに凄かったかが伝わる。

加藤和彦のアルバムの数々

「スモール・キャフェ」 死による別れを暗示させる曲

そんな加藤和彦の残した楽曲からの極私的3曲の1曲目は 『パパ・ヘミングウェイ』から「スモール・キャフェ」を選ぶ。このアルバムには坂本龍一、高橋幸宏などそうそうたるメンバーが参加していた。

ぼくは3度ほどパリを訪れているが、「スモール・キャフェ」を聴くと晩秋のパリの街角を思い出す。安井かずみの詞は、ふたりはこの時は予想だにしていなかったろう、死による加藤和彦との突然の別れを暗示させる。加藤和彦に生前、安井かずみの死後、パリを訪れたか聞きそびれたが、もし訪れていたら、その悲しみの深さは青い海の深海ほどだったと思う。

加藤和彦の“ヨーロッパ3部作”。左が、1979年の『パパ・ヘミングウェイ』
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岩田由記夫
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