酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?軽快な味わいと果実を思わせる豊潤な香り。大人気の日本酒を醸す女性杜氏は、一軒の飲食店で…
画像ギャラリー酒の造り手だって、そりゃ酒を飲む。誰よりもその酒のことを知り、我が子のように愛する醸造のプロ「杜氏」は、一体どのように呑んでいるのか?軽快な味わいと果実を思わせる豊潤な香り。大人気の日本酒を醸す女性杜氏は、一軒の飲食店で自作の酒を口にした。
奈良県『油長酒造』
【中川悠奈氏】
1991年奈良県生まれ。食物栄養を専攻する大学在学中、酒造への興味が高まり、神亀酒造でのインターンシップを経験。卒業後、2014年に油長酒造入社。2014年に醸造責任者に就任。新たな感性を酒造りに注いでいる。
リラックスできるお店で、ゆるりと
「和食はもちろん、いろんなジャンルのお店で、風の森807シリーズやALPHAシリーズを酌む」と、杜氏は言った。「風の森」を醸す油長酒造の醸造責任者・中川悠奈さんだ。「風の森」のコンセプトは、ずばり「しぼりたて」だと、中川さんは話す。理想は原料のお米の個性が豊かに感じられる酒。あえてあまり精米しない米を、伝統製法と現代の醸造技術で上手くコントロールして醸す。
「なるべく精米せず、甘みや旨み以外にも、お米本来のほのかな苦味や渋みといった複雑味さえも溶け込んだ豊かな味わいを目指しています。キレイさや華やかさだけではない、大地のエネルギーが感じられるお酒を造りたいんです」「風の森」は地元の契約農家が栽培する昔ながらの米、秋津穂や奈良県唯一の酒米である露葉風(つゆはかぜ)などを原料に、精米歩合によって異なる香気成分を作り出す7号酵母、日本で最も硬い部類の硬水の仕込み水で造られる。
807は精米歩合80%と7号の組み合わせを意味する、低精白シリーズ。ALPHAは奈良の伝統技法の菩提もとと独自技法を組み合わせて醸すシリーズ。中でもALPHA1「次章への扉」は、アルコール度数を低く設計しながら、豊かな果実感と確かな飲み応えを実現。「この2種があれば、どんな料理もカバーしてよりおいしくしてくれます」と、まるで我が子のように紹介する。
この日、蔵人行きつけの伊料理店のカウンターには、お気に入りの料理が並んだ。オレンジとマスタードのソースをまとったカツが露葉風807の複雑な風味と呼応し、中川さんの頬も思わず緩む。
「実は主人とは職場結婚でして、彼は毎晩飲むんですが、私はつい仕事モードの利き酒になってしまうので家では基本的に飲みません。外の方が気分が変わってリラックスして飲めるので、風の森を味わえるお店にたまに行きますね。イタリアン全般や鴨料理にもよく合います。それと、和菓子との相性も抜群。私はよく水羊羹で〆ます。風の森を飲みながら(笑)」酒の妙味に惚れ、一生の仕事に選んだ酒造業。厳しい世界をしなやかに渡る自然体の姿があった。
『GIORCO(ジョルコ)』
[住所]奈良県橿原市内膳町4-4-3 北ビル1階
[電話]0744-47-4722
[営業時間]17時~24時(23時半LO)
[休日]日、月2回不定休
[交通]近鉄大阪線ほか大和八木駅北口から徒歩3分
『油長酒造(株)』@奈良県
製油業を1719年に酒造業に転換。銘柄は「風の森」「水端」を主力に、無濾過・無加水にこだわった酒造りを続けている。「次章への扉」はアルコール度数を14%に抑えながらふくよかな味わいを表現した1本
【風の森 ALPHA1「次章への扉」】
撮影/松村隆史、取材/渡辺高
※2023年6月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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