珍しいヨーロッパ野菜を使った“イタリアン”な給食も
一方、伝統食品にとどまらず、“新顔”を積極的に取り入れているのは女子栄養大学特別賞を受賞した埼玉県朝霞市立朝霞第八小学校です。献立で目をひくのは、スイスチャードやコールラビといった珍しいヨーロッパ野菜。さいたま市を中心に若手農家らで作る「さいたまヨーロッパ野菜研究会」が生産しており、主にイタリアン・フレンチレストラン向けに流通しているそうです。
敢えて給食の献立に採用したことについて、同校の中美奈子栄養教諭は「埼玉県が誇る新しい名物として、子供達にも関心を持ってほしい」と話します。児童の反応は上々で、緑の野菜が苦手な子供も「どんな味がするのか楽しみ」と興味津々で手をつけるといいます。
「子供は忖度しないので、まずかったら残す」
2023年度のコンテストでは、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」を意識した取り組みも目立ちました。
優勝の新井中央小学校がある妙高市は、政府の「SDGs 未来都市・自治体SDGsモデル事業」に選定されていることもあって、ふだんから給食の献立にも出荷する際にはじかれる野菜の茎や葉まで余すところなく活用しています。今回メニューで使われたアスパラ菜も、見た目を揃えて出荷する際にはじかれた葉や茎をご飯に混ぜたり、和え物にして提供しました。
一方、大村智特別賞の佐賀県佐賀市富士学校給食センターの献立には、麦入りご飯に、だし昆布とかつお節の出し殻を再利用したふりかけが添えられています。いずれもSDGsにある目標12「つくる責任、つかう責任」を念頭に置いたものです。
大会を主催した21世紀構想研究会の馬場錬成理事長は「子供は忖度(そんたく)しないので、まずかったら残す。しかも、飽食の時代で味覚が肥えているので、子供が満足できる美味しさを出すのは(昔に比べ)大変なこと」と話します。それゆえ、あの手この手で給食の進化に挑む栄養教諭や調理員の皆さんの子供達への深い愛情を痛感します。
小学生の時は偏食で食が細いがゆえ、食べ残しを許されなかった筆者にとって、40年以上前の給食の時間はまさに、修行。学校給食を取り巻く環境の変化に、隔世の感があります。