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ローマの皇帝は、フランスの太陽王は、ベートーベンは、トルストイは、ピカソは、チャーチルは、いったい何をどう食べていたのか? 夏坂健さんによる面白さ満点の歴史グルメ・エッセイが40年ぶりにWEB連載として復活しました。博覧強記の水先案内人が、先人たちの食への情熱ぶりを綴った面白エピソード集。第39話をお送りします。

作家の作品傾向は食の好みと深く関わる

文豪たちの食卓は、その作品と深く関わっているように思える。

たとえば『チャタレー夫人の恋人』や『てんとう虫』のロレンス、『魔の山』『ヴェニスに死す』のトーマス・マン、『断腸詩集』『お屋敷町』のアラゴン、『蠅の王』のゴールディングなどは、人目を引くほどの大食漢として知られている。巨大な肉塊や皿から溢れんばかりのシチューを苦もなく平らげながら、旺盛な食欲にふさわしい仕事をこなしている。

食の世界から分類すれば、こうしたタイプは「食肉派」というべきだろう。

『変身』『断食芸人』『城』のカフカ、『テレーズ・デスケール』のモーリアック、『黒いオルフェ』のサルトル、『侮蔑』のモラヴィア、『鐘』のマードックらは、どちらかというと白ワインの「魚介派」に属し、食事にゆっくりと時間をかけておしゃべりを楽しんだ長っ尻として有名である。

食と仕事は切っても切れない関係にある。その人の好物の一皿がわかっただけで、たちまち全人格が見えてしまうことだってある。それなのに、この分野の研究はいまだに不毛のまま、放置されている。

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16世紀の英国では鹿肉は一番のごちそう...
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おとなの週末Web編集部 今井
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