文化の香りがする「蒲郡ブラック」
まずは「ラーメン」からチェック。富山ブラックほど真っ黒ではないものの、たしかに黒い。例えるならば、富山ブラックが松崎しげるとしたら、この「ラーメン」は東幹久か。って、わかりにくいな(笑)。
実はここ、蒲郡市では中華料理店やラーメン店が出しているラーメンを自ら「ブラック」と名乗っているのではなく、それを食べた客が「蒲郡ブラック」と命名したようだ。もちろん、中にはその人気にあやかって「蒲郡ブラック」として売り出している店もあるかもしれないが。
「蒲郡ブラック」は、店が仕掛けたのではなく、地元で暮らす人々の間で自然にその名前が生まれたところに文化の香りがする。これは大切に育てなきゃ。
さて、「ラーメン」に話を戻そう。まずはスープをひと口。見た目とは裏腹にほんのり甘く、深いコクを感じる。これはおそらく、ラーメンのタレにたまり醤油を使っているからだろう。地元出身の筆者にとっては慣れ親しんだ味。
麺はやや縮れのある中太麺。町中華でよく使われているものだろうが、このスープを吸った麺がやたらと旨い。チャーハンを思いっきり頬張りたくなる衝動に駆られる。
たまり醤油を用いるのは自然の成り行き
すかさずレンゲにテンコ盛りにしたチャーハンを掻き込むと、スープのコクとチャーハンの焦がし醤油の香ばしさが相まってムチャクチャ旨い! さらにお米の甘みも加わって、レンゲを持つ手が止まらなくなる。
ラーメンに入るチャーシューも味がしっかりしていて、チャーハンと相性は抜群。チャーハンを食べるとラーメンが食べたくなり、ラーメンを食べると今度はチャーハンが食べたくなる。無限のチャーラーループを心ゆくまで楽しんだ。
愛知県の三河地方や知多半島では、味噌や醤油、みりん、酢などの醸造が盛ん。ゆえに蒲郡市のラーメン店がたまり醤油を使うのは自然の成り行きなのだ。
その一方で、名古屋市内でたまり醤油を使っているラーメンを出す店はごくわずか。蒲郡ブラックがもっと盛り上がれば、名古屋にも飛び火するかもしれない。しかも、名古屋はアレンジを加えるのが上手いので、蒲郡ブラックとはまったくの別ものになるような気がする。そんなラーメンが生まれたら、筆者は「大名古屋ブラック」と命名する。
取材・撮影/永谷正樹