ソクラテスが生涯菜食主義に徹した理由とは!?
ソクラテスといえば、悪妻のクサンチッペに一生悩まされ、国家紊乱の罪で毒殺された哲学者として知られているが、その実像たるや乞食同然。71年間の人生でパンの一片すら稼いだことがない。ボロをまとって辻説法に明け暮れ、人をつかまえては問答のくり返し。空腹にたまりかねたクサンチッペがガミガミと文句を並べ、あげくにバケツの水を頭から浴びせると、
「雷のあとには雨が降る」
こういって笑い、門弟たちに向かって、
「結婚とはいいもんだ。良妻をもらえば幸せになれる。悪妻をもらえば哲学者になれる」
と説教した超人である。彼が生涯肉食を避け、菜食主義に徹したのは、
「肉を得るための殺りくが人間の闘争本能を助成させる」
というピタゴラスの思想によるものとされているが、本当のところは肉が買えなかったのではないか、という説もある。この菜食思想を受け継いだのが高弟のプラトンで、それを脚色したのが思想家であり作家のジャン・ジャック・ルソーと文豪トルストイの2人だ。
(本文は、昭和58年4月12日刊『美食・大食家びっくり事典』からの抜粋です)
夏坂健
1934(昭和9)年、横浜市生まれ。2000(平成12)年1月19日逝去。共同通信記者、月刊ペン編集長を経て、作家活動に入る。食、ゴルフのエッセイ、ノンフィクション、翻訳に多くの名著を残した。その百科事典的ウンチクの広さと深さは通信社の特派員時代に培われたもの。著書に、『ゴルファーを笑え!』『地球ゴルフ倶楽部』『ゴルフを以って人を観ん』『ゴルフの神様』『ゴルフの処方箋』『美食・大食家びっくり事典』など多数。
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