逸話がいっぱいある!!
S13シルビアは日本のクーペモデルとして空前の人気モデルになったが、それとリンクするかのような逸話を簡単に振り返ってみたい。
■新車購入者の70%が20代の若者
これは日産が明言したわけではないが、当時巷で都市伝説のように言われていたこと。クルマの購入平均年齢は50歳くらいということを考えると驚異的な数字で、後にも先にもこんなに若者にウケたクルマはないんじゃないだろうか。
■シルビアからシルビアに買い替え
S13シルビアは1988年にデビューした時は、エンジンは1.8L、直4のNA(過給なし)とターボを搭載していたが、1991年にエンジンを2Lに排気量アップ。すると、1.8Lよりも高性能な2Lエンジンを求めて、初期型のS13シルビアオーナーがこぞって後期型の2Lモデルへの買い替えが殺到した。今ではクルマ買い替えサイクルは新車降雨入後の場合、7年を超えていることを考えるとこれまた驚異的なこと。
■スワップが人気
S13シルビアにはコンポーネント(構成部品)を共用する180SXが存在した。シルビアがノッチバッククーペ(トランクが独立したクーペ)で固定ヘッドライトだったのに対し、180SXはハッチバッククーペ(リアハッチを持つ)でリトラクタブルヘッドライトだった。
そんな兄弟車の2台を複合させた、いわゆるスワップモデルの人気が高かったのもS13の逸話のひとつ。180SXにシルビアのAピラーより前の外板パーツを装着したシルエイティ、その逆のシルビアに180SXのAピラーより前の外板パーツを装着したワンビアの両タイプが存在したが、人気が高かったのはシルエイティだった。これはデビューから時間が経過し、中古車のタマが増えてから顕著になった。
■S13の下取り車にプレリュード
1980年代から1990年代初頭は新車の買い替えサイクルが早かったが、S13シルビアの新車を購入する際の下取り車にプレリュードが一番多かった、というのもライバルを駆逐した証といえる。
■マイチェン後のリアスポイラーが不評
S13シルビアは前述のとおり、マイナーチェンジでエンジンを換装したが、デザインは好評だったためほとんど手を入れなかった。手を入れたのはアルミホイールのデザインとオプションで設定されていたリアスポイラーくらいだったが、その新型のアスポイラーのデザインが不評で、発売当初は前期型のリアスポイラーの需要が高まったという逸話もある。
これらの逸話は一部だが、S13シルビアはホントに稀有なクルマだったことがよくわかる。S13シルビアを新車で買って乗っていた人、中古で買った人、欲しいと思いながらも買えなかった人などそれぞれだと思うが、懐かしんでくれたはずだ。
【5代目(S13型)シルビアK’s主要諸元】
全長4470×全幅1690×全高1290mm
ホイールベース:2475mm
車重:1120kg
エンジン:1809、直列4気筒DOHCターボ
最高出力:175ps/6400rpm
最大トルク:23.0kgm/4000rpm
価格:188万6000円(5AT)
【豆知識】
S13シルビアとエンジンをはじめとする基本コンポーネントを共有する兄弟車で、S13から1年遅れの1989年5月にデビュー。リトラクタブルヘッドライトのハッチバックスタイルでシルビアと差別化されている。走り屋からはフロントが重く、リアの開口部により剛性が不足していると不評だった。1993年にシルビアはS14型にフルモデルチェンジしたが180SXは継続販売された。S14シルビアが3ナンバーサイズに大型化されて人気を落とす一方、5ナンバーサイズの180SXが人気となったのも懐かしい。
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/NISSAN、ベストカー