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31歳で蕎麦の道へ、名人・高橋邦弘氏のもとで修業し“いい水の地”に開業

全店実食調査!『おとなの週末』が自信を持っておすすめするお店をご紹介します。今回は、神奈川県開成町の蕎麦店『そば処 あしがら翁』です。

広がる田園風景、研ぎ澄まされた一枚

周囲には他に飲食店などない、のどかな田園風景の中にその店はポツンと佇んでいた。遠くに見えるのは丹沢の山々の連なり。「いいでしょう、この眺め」ご主人の皆川昌彦さんは清々しい笑顔でそう言った。

『そば処 あしがら翁』周辺の風景。シーズン中は近くに河津桜のスポットも

蕎麦の道に入ったのは、少し遅咲きの31歳。縁あって当時、山梨県・長坂にあった『翁』で修業を開始した。そう、この店名にピンときた読者もいるはず。名人と謳われる高橋邦弘氏の店だ。

ここで5年間、みっちり技術を叩き込まれたのち、箱根湯本や東京・広尾の店を経て、平成19年にこの地に住居兼店舗を構えた。

場所を選ぶ際、決め手になったのが第1にこの風景。そして第2が蕎麦の味を左右する水だという。「下見に来た時、この地域の水道水を飲んでみたら直感的にいい水だな、と感じました。役場に行ってよくよく聞いてみたら、富士山や箱根の深層地下水を利用していたんです」。

そんな水で打つ皆川さんの蕎麦を表現するならば“たおやか”という言葉が頭に浮かぶ。

ざる 970円

『そば処 あしがら翁』ざる 970円 その時々で農家から仕入れる蕎麦の実を石臼で極微粉に挽いて打つ。なめらかなのど越しと、もっちり奥ゆかしいコシだ。かえしとダシが調和したツユがその甘みと香りを膨らませる

しっとり艶を浴びたそれをひと箸たぐれば麺の肌は絹のようななめらかさで唇や舌を撫でていく。コシもモチモチと穏やかな表情。でもその中心にほんのひと筋残した芯にはコリっと鮮やかな歯応えがある。

それを本枯節のダシを効かせた旨口のツユにつければ、返ってきたのは二八とは思えぬ深い香り。見事なまでに研ぎ澄まされた蕎麦だ。

とはいえ、皆川さんや奥様の柔和な人柄もあって堅苦しさはみじんもない。のんびり蕎麦に浸り景色に抱かれる、きっとそれは最高の休日だ。

『そば処 あしがら翁』

神奈川県開成町『そば処 あしがら翁』

[住所]神奈川県足柄上郡開成町延沢2508-2
[電話]0465-83-5806
[営業時間]11時半~15時(蕎麦が無くなり次第終了)
[休日]火・水
[交通]小田急小田原線新松田駅北口から徒歩26分(箱根登山バス関本行き約7分)

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2024年4月号
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撮影/貝塚隆、取材/菜々山いく子
※2023年12月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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