「パンの街」神戸で創業100年 名建築の教会を改修、老舗カフェの病みつきになるサンドイッチ

FREUNDLIEB本店(神戸市)

神戸を代表する教会をリノベーションしたカフェ「FREUNDLIEB(フロインドリーブ)本店」が2024年3月で創業から100年を迎えた。看板メニューは、手作業で焼くパンを使ったサンドウィッチと焼き菓子だ。神戸は「パンの街…

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神戸を代表する教会をリノベーションしたカフェ「FREUNDLIEB(フロインドリーブ)本店」が2024年3月で創業から100年を迎えた。看板メニューは、手作業で焼くパンを使ったサンドウィッチと焼き菓子だ。神戸は「パンの街」とも言われ、食パンの消費額(2023年)では全国の県庁所在地や政令指定都市でトップ。洋風の文化を育んできた港町で、「パンが絶品!」と支持され続ける老舗カフェの魅力を紹介したい。

閑静な住宅街に現れたゴシックスタイルの教会建築

神戸市の中心にある神戸三宮駅から13分ほど歩くと、住宅街に突如ゴシックスタイルの“教会”が現れる。でも、本当の教会ではない。こちらが、「旧神戸ユニオン教会」を改修したカフェ「FREUNDLIEB本店」である。

1階がベーカリーショップで、2階の礼拝堂がカフェになっている。旅の途中にほっと一息つきたい時はもちろん、神戸らしい手土産を買って帰りたい時にもぴったりのスポットだ。

「旧神戸ユニオン教会」を改修した「FREUNDLIEB本店」の外観

向かって左手にあるのが、尖頭アーチが特徴的なゴシック式の礼拝堂棟。正面の玄関上部につりがねを設置した鍾塔(しょうとう)、右手に柱や梁などを漆喰やレンガで埋めたハーフティンバー様式の牧師館棟という構成だ。荘厳な佇まいに圧倒される。

創業者はNHK朝ドラのモデル、戦争と大震災を乗り越えたドイツパンの名店

創業者の初代ハインリッヒ・フロインドリーブはドイツ生まれ。14歳からパン屋の見習いとして働いていたが、第一次世界大戦で従軍し、日本軍の捕虜となって終戦後も帰国せず、日本にとどまった。1920(大正9)年に名古屋で創業した「敷島製パン」で製パン技師としてパン製造に力を尽くし、その後、日本人の妻ヨンとともに、1924年、神戸で自身のパン屋を開店。本格的なドイツパンは評判を呼び、地元で愛されてきたが、1945(昭和20)年の神戸大空襲で、店舗を失った。

1948年、神戸市中山手通で店を再開。1955年に長男のハインリッヒ・フロインドリーブII世がジャーマンホームベーカリーを設立。ドイツパンに加え、ドイツ菓子を製造スタートさせた。初代ハインリッヒ・フロインドリーブは同年死去。日本にドイツパンを広めた夫婦の歩みは、1977年~78年に放送されたNHK朝ドラ「風見鶏」のモデルにもなった。

結婚式を挙げた思い出の場所を本店に

1990(平成2)年には、ハインリッヒ・フロインドリーブII世の長女、ヘラ・フロインドリーブ上原さんが店を継いだ。しかし、1995年の阪神淡路大震災で甚大な被害を受け、休業。修復工事を経て営業をなんとか再開させたが、店舗が傾いていたため、移転を決意し、目に留まったのが、旧神戸ユニオン教会だった。

実は、ヘラさんが結婚式を挙げた思い出の場所だ。神戸ユニオン教会は日本最古のプロテスタント教会で、1872年に居留地の48番に建てられた「ユニオン・チャーチ」が前身だとされる。教会自体が1989年に、神戸市内に新たな会堂を建てて移転したため、“空き家”として残っていた。大震災に遭っても顕著な損傷がなかったため、1999年に買い取り、リノベーションを施して、現在の店をオープンさせた。

趣のある建築は国の登録有形文化財に指定されている

名建築家ヴォーリズによる歴史的建造物

旧神戸ユニオン教会は、アメリカの建築家、ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(1880~1964年)が設計した歴史的な建築物だ。ヴォーリズは、戦前から日本で暮らし、神戸女学院ケンウッド館など、明治末期から昭和にかけて“西洋建築の美”を日本にもたらした。

入口の奥には四季折々の花々が咲き乱れる中庭に通じる通路がある

木製の手すりが創業当初を思わせる階段を上がると、踊り場には創設者のハインリッヒ・フロインドリーブの写真や絵画が飾られ、ノスタルジーな雰囲気が漂う。

重厚で温かみの感じられる階段

礼拝堂をリノベーションした2階のカフェスペースに到着すると、尖塔アーチの窓や豪華絢爛なシャンデリアが目に入る。床はブラウンとホワイトがベースの市松模様で、白い壁とのコンラストがなんとも美しい。左右の窓からは光が差し込み、開放感あふれる空間となっている。

神聖な空気が漂う

看板メニュー「クラブハウスサンドウィッチ」

ここに来たら必ず食べておきたいのが、10種ほど揃うサンドウィッチだ。中でも、スパイスの効いたハーブチキンとゆで卵、べーコンや野菜などを食パンでサンドした「クラブハウスサンドウィッチ」(ランチセット1540円)は、幅広い世代に支持を集める人気NO.1の看板メニュー。むっちり歯ごたえ抜群の食パンは、一度食べたら病みつきに。まろやかな風味の中にも程よい酸味を感じる別添えの自家製マヨネーズは、パンに“追いマヨ”して楽しむのがおすすめ!

角食パンを使った「クラブハウスサンドウィッチ」

1階にはテイクアウトができるショップを併設。パンやゲベック(ドイツの焼き菓子)、クッキーやパイなどが並んでいる。

白を基調とした洗練されたショップの店内

その日販売するパンは、午前中の開店時にすべて出し、売り切れ次第終了となる。自然発酵時間を待って仕上げるドイツパンは、弾力感たっぷりでパリッとした食感。創業当時から6時間製法を守り、レンガ窯で焼き上げているそうだ。

ドイツパンのほか、パイやクッキーも販売している

「100年間築き上げた伝統を受け継ぎつつ、ゲストの皆様のお声に耳を傾けながら、弊社のヴィジョンでもある、また来たいを実現していきたい」と、代表取締役社長の岡崎三葉さん。ショップでは、1900円以上購入した客を対象に、100周年記念の「ジッパーバッグ」もプレゼント中だ(2024年3月14日~無くなり次第終了)。世紀を超えて愛される名店の大切な節目に、ぜひ足を運んでみてほしい。

「FREUNDLIEB本店」
[住所] 神戸市中央区生田町4-6-1
[電話] 078-231-6051
[営業時間]ショップ10時~18時、カフェ10時~18時(L.O.17時30分)
[休日]水曜日(祝日の場合、翌日代休)
[交通]神戸三宮駅から徒歩13分
[公式サイト]http://h-freundlieb.com/wp1/

文・写真/中村友美

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