東京東部のエリアはかつて多くの水路があったことで知られ、今も隅田川、清澄庭園、門前仲町の水路などその面影を色濃く残している。ここでは涼やかな風が心地よい、散策にぴったりなスポットを紹介する。
画像ギャラリー東京東部のエリアはかつて多くの水路があったことで知られ、今も隅田川、清澄庭園、門前仲町の水路などその面影を色濃く残している。ここでは涼やかな風が心地よい、散策にぴったりなスポットを紹介する。
春のうららの…の曲名は?
♪春のうららの隅田川♪ 武島羽衣作詩・滝廉太郎作曲の誰もが知る名曲『花』。
小学生の頃、この歌のタイトルが『花』であると知り、「『隅田川』じゃないの?」と思った人も多いだろうが、それはともかく。この歌の一番の最後の一節にこうある。
♪ながめを何に たとうべき♪ 何物にもたとえることなどできないほどに、隅田川の眺めは素晴らしい、のである。そしてその素晴らしさは、この曲の完成した明治33年よりもむしろ、今の方が気軽に楽しめる。『隅田川テラス』があるからだ。
『隅田川テラス』とは、隅田川の上流は赤羽近くの岩淵水門辺りから、下流は築地周辺まで。ところどころ欠けている地区もあるが、右岸と左岸の両岸で約32キロ(!!)も続く、川辺の護岸基礎を親水施設として開放したスペースだ。
江戸時代、城下一の花街として栄えた柳橋(現在のJR浅草橋駅近く)から、隅田川テラスへと歩を進める。お昼時だったこともあり、近隣で働く多くの人が、川沿いに並ぶベンチでランチを広げていた。
さらに上流の厩橋近くの隅田川テラスも、同じように川を愛でる人たちでにぎわっていた。川面を渡る風。行き交う水上バスの生む水紋。ああ東京とは、かくも水に恵まれた都市であったのか。
事実、江戸の街は東洋のベニスといってもいいほどに水上交通が発達していたという。日本橋から京橋。そして隅田川を渡った本所深川にかけては、網目のように水路が張り巡らされていたそうな。
豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡
そんな水路の中でも今に残る仙台堀川。昔は隅田川と木場を結んでいたこの水路のすぐ近くに、東京屈指の庭園『清澄庭園』がある。
豪商・紀伊國屋文左衛門の屋敷跡を含む一帯の土地を、岩崎彌太郎が明治時代に造園。昔は隅田川から水を引いていた大泉水を中心とした回遊式林泉庭園だ。
水鳥が集う大泉水越しに眺める富士山と名付けられた巨大な築山。点々と石を配置し、池端を歩けるようにした磯渡り。心身を潤す清涼感にあふれた庭園である。
地下鉄の門前仲町駅から、大横川を黒船橋で渡った先。この一角には昔、石置場があったことから、現在の町名は古石場。そんな風流な名前の町に、小さなせせらぎの流れる『古石場川親水公園』がある。季節には牡丹の花咲く牡丹園もあり、近くの深川の喧騒が嘘のような静寂がある。
隠れた水の都・東京。その良さ、何にたとうべきか。
『清澄庭園』
[住所]東京都江東区清澄3-3-9
[営業時間]9時〜17時
[休日]年末年始
[交通]都営大江戸線ほか清澄白河駅から徒歩3分
[HP]https://www.tokyo-park.or.jp/park/kiyosumi/
撮影/浅沼ノア、文/カーツさとう
※2024年7月号発売時点の情報です。
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