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仮面ライダーのロケ地

もともとは「配水塔」と呼ばれていたが、いつのころからか地域で暮らす人々からは「給水塔」の愛称で呼ばれるようになった。同じ建造物が2つ建つことから「双子の給水塔」とも呼ばれる独創的なデザインの配水塔は、その威容から“悪者のアジト”としてさまざまな映像シーンに使われた。なかでも、1974(昭和49)年に製作された劇場版『仮面ライダーX』では、悪役GOD(Government Of Darkness/闇の政府)の「奇岩城」として、この給水塔が登場した。筆者はこの作品のリアル世代でもあり、また、駒沢給水所の隣にあった幼稚園(現在は移転)に通っていたので、本当にGODがこの建物にいるのではないかと、恐怖心を抱いたことを今でも覚えている。

都内とは思えない光景が広がる給水所内=2003年7月4日、駒沢給水所(東京都世田谷区)
2つの給水塔をつなぐ点検橋は、悪者が転落するシーンに使われた。昭和の時代だから許された名場面だった=2003(平成15)年7月4日、駒沢給水所(東京都世田谷区)

世田谷のパワースポット!?

100年の歴史のなかで、建設途中に起きた1923(大正12)年9月の関東大震災では、被害を受けることもなく、また、先の大戦でも無傷で生き残るなど、この建造物には「運」を感じる。ある意味、パワースポットといっても過言ではないだろう。現在はセキュリティー上の理由から一般公開は行われていないが、毎年6月1日から7日まで実施される「水道週間」の期間中には、装飾電球を点灯するイベントが催される。

過去には、何度となく老朽化を理由とする解体の話もあった。現役を退いた現在では、給水所としての機能を休止し、非常時用の応急給水塔に退き、災害時用の給水施設として活用されており、2012(平成24)年には公益社団法人土木学会選奨の「土木遺産」にも認定されている。今後も、時代の生き証人として、また、街のシンボルとして永久的な保存を望みたいところだ。

毎年の水道週間(6月1日~7日)では装飾電球が灯される。この電球は、長年の風雨で破損していたガラス製品を取り外し、新たにポリカーボネイト製品で復元したものが取り付けられている=2004(平成16)年10月1日、駒沢給水所(東京都世田谷区)

文・写真/工藤直通  

くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元日本鉄道電気技術協会技術主幹。芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。

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