鉄道模型をはじめ、玩具や雑貨品に、列車名のネーミングや車両デザインを使用した鉄道関連商品は、世の中にあふれるほど出回っている。そして、その商品には、たとえば「〇〇鉄道商品化許諾済」などと記されるのが一般的だ。商品化に関しては、昭和の時代、鉄道会社はあまり関心がなかったように映る。しかし、20世紀の末ごろから、許諾事業に目覚めてしまったようだ。なぜ、そのようなことになったのか。鉄道と商標登録の背景に迫ってみたい。
※トップ画像は、北海道へ乗り入れていたころの寝台特急「カシオペア」号=2016(平成28)年3月20日、JR北海道千歳線千歳駅~南千歳駅間(北海道千歳市平和)
新幹線やブルートレインの商標登録
新幹線やブルートレインといった名称は、JR発足後、商標登録が行われていた。それでも、鉄道の利用促進につながるようなケースでは、現在ほど使用許諾については厳しくなかったとされる。各鉄道会社間では、”業務上という枠組み”のなかであれば、商標登録された名称であってもその使用は“暗黙の了解”として扱われてきた。しかしながら、無断で第三者が店名に使用したりした場合には、法的措置に踏み切った例もある。
その昔、国鉄が民営化した際に、それまでの国鉄のロゴマーク「JNR(Japanese National Railways)」を、“ジャパンニューレールウェイズ”としてそのまま使用できないかと、検討したことがあったと伝え聞く。しかし、”新生JR”という企業イメージにはそぐわないと、現在の“JR”になったといわれる。
列車名は「当社の登録商標」
1999(平成11)年、華々しく星座の名を冠した列車が走り始めようとしていた。ところが、ある企業から「その列車名は当社の登録商標ですが」という問い合わせを受けたと、関係者から聞いたことがある。鉄道会社の商標登録への関心は、このような出来事などから次第に高まっていったのではないかと、筆者は推測してしまう。
その靴の名は…
こんな話も聞いた。ある靴メーカーが、自社ブランドの登山靴に商品名をつけた。しかし、同じ名前を商標登録していた鉄道会社が、そのことを指摘したところ、その靴メーカーは、早々に商品の販売を取り止めたという。
鉄道会社は、列車名に商品価値や付加価値を求め始めるようになり、例えば鉄道をモチーフにした模型や雑貨類などにも”商品化許諾制度”や”ロイヤルティー”を課すことに積極的になっていったようだ。新たな鉄道ビジネスが育っていく背景には、こんなエピソードを含め時代の流れもあったのだろう。