シエンタとライバル・フリードの違いとは?
シエンタのライバル車になるフリードは、現行型になって全長が4300mmを超えてクロスターはワイドな3ナンバー車になったが、シエンタは全長が4300mm未満の5ナンバーサイズにこだわる。全高も2WDは1700mmを超えず1695mに抑えた。
さらにシエンタでは、3列目シートは2列目の下側に格納され、荷室に張り出さない。その代わり格納の作業をする時は2列目を動かす必要があって少々面倒だ。つまりシエンタでは、通常は3列目を2列目の下に格納して荷室の広いコンパクトカーとして使い、稀に多人数で乗車する時だけ3列目を引き出す使い方を想定している。
これはノア&ヴォクシーとのチームワークを考えた結果だ。ノア&ヴォクシーは、3ナンバー車で全高も1800mmを上まわり、3列目はレバーを引くだけで簡単に持ち上がる。頻繁にシートアレンジを行う使い方を想定している。
シエンタはノア&ヴォクシーとの重複を避けることも視野に入れ、ボディは小さく、全高は低く、シートアレンジは2列状態を重視して、いわばコンパクトカーに近いミニバンに仕上げた。さらにアルファード&ヴェルファイアも、ノア&ヴォクシーとはまったく違う世界観で開発されている。
ちなみにホンダのフリードは、コンパクトミニバンでもミニバンらしさが濃厚だ。ユーザーにとってメリットになり得るが、ステップワゴンとの重複や競争も避けられない。チームワークはあまり考えていないが、トヨタのシエンタ/ノア&ヴォクシー/アルファード&ヴェルファイアは、身内に対する気配りが凄い。
互いに相手の領域を絶対に侵さず、さまざまなユーザーを幅広く捕らえる。そこにトヨタのチームワークの強さがある。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/ トヨタ、ホンダ