「宮廷」の名に相応しい上品な味わい
「とんかつラーメン」を注文しなかったのは、他の麺料理にはミニ焼き飯が付くのに、これだけライス付きだったから。きっと、焼き飯との相性は良くないのだろう。
それと、町中華に必ずある醤油ラーメンがメニューにないことにも気が付いた。いちばんシンプルな麺は「焼き豚ラーメン」(810円)。これにわずか60円を追加するだけでミニ焼き飯付きになる。おそらく、日本一安い半チャーハンだろう。
これが「焼き豚ラーメン」。低温調理のチャーシューが予想外だった。具材はほかにモヤシとネギ。うん、いたってシンプル。
まずはスープをひと口。これは醤油味ではなく、塩味。それだけに鶏の旨みがしっかりと抽出されているのが伝わってくる。町中華の青湯スープとはまったく違う。ホテルのような上品な味わいなのだ。これが店名に宮廷を冠している理由かもしれない。
また、麺にもこだわっているようで、メニューに「特製玉子麺」と書かれていた。「細いのにしっかりとした歯応えが特徴!スープにもしっかり馴染みます」とも。
歯応えといっても、博多ラーメンのようなポキポキ感ではなく、麺の中心部分はもっちりとしている。それがとても心地よい。この麺もまた町中華とはまったく違う。
こちらが「ミニ焼き飯」。おそらく、大量に仕込んでジャーで保温したものを注文ごとに出していると思う。それだけにパラパラ系なのかしっとり系なのかがよくわからないような仕上がりになっている。
しかし、その旨さに驚いた。塩、コショウだけでは出せないような複雑な味わいが後を引く。とくにラーメンのスープを飲んで、その味とコクの余韻を口の中に残した状態で食すと悶絶するほど旨い。量はご飯茶碗に一杯分くらいだが、三杯分くらいは食べられる。
まったく土地勘のない大和八木駅でこんなにおいしいチャーラーに出会うとは思わなかった。これだからチャーラーの食べ歩きはやめられないのだ。
取材・撮影/永谷正樹
1969年愛知県生まれ。株式会社つむぐ代表。カメラマン兼ライターとして東海地方の食の情報を雑誌やwebメディアなどで発信。「チャーラー祭り」など食による地域活性化プロジェクトも手掛けている。