価格や取り回しの良さで人気の高い国産の小型SUV。近年、海外で生産されて国内に導入される「逆輸入車」が増えている。2024年発売で話題のホンダWR-Vや日産が以前から導入しているキックスなどがこれに当たる。価格や装備などで比べたら、逆輸入車はお買い得なのだろうか?
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価格や取り回しの良さで人気の高い国産の小型SUV。近年、海外で生産されて国内に導入される「輸入車」が増えている。2024年発売で話題のホンダWR-Vや日産が以前から導入しているキックスなどがこれに当たる。価格や装備などで比べたら、輸入車はお買い得なのだろうか?
日本車の海外の販売比率が増えている
今の日本メーカーは、世界的な企業に発展して、海外の販売比率を高めた。ダイハツを除くと、生産総数の80%以上を海外市場で売っている。そのために日本では買えない海外専売の日本車も増えた。
そして今では、日本メーカーの海外工場で生産された車両を日本へ輸入して販売するパターンも見られる。近年では国内の売れ行きが下がり、少数の日本仕様を国内で生産するなら、大量に造られる海外生産車を日本へ輸入した方が効率が良いためだ。
特に注目されるのが全長を4500mm以下に抑えたコンパクトSUVで、日産はタイ製のキックス、ホンダはインド製のWR-Vを輸入販売している。スズキもインド製のフロンクスを国内へ導入する予定だ。
以前は北米の工場で生産された車両を輸入することも多かったが、今はタイやインドの品質が向上して、国内生産と遜色のない水準に達している。タイやインドは日本からの距離が比較的近く、小型車の種類も豊富だから、日本へ輸入する好条件がそろっている。
円安でもお買い得な装備内容
気になるのは昨今の円安傾向だ。円安が進むと、価格を高く設定せざるを得ない。メーカーの商品企画担当者は次のように述べた。
「近年はタイやインドの品質と併せて生産コストも上昇傾向にあるが、日本で生産するのに比べると効率が優れているから輸入販売している。ただしコンパクトSUVでは価格競争力が重要で、割安に抑えたい。今のように円安が長引くと、価格も高めになるから、販売面で不利になってしまう」。
例えばWR-Vの最廉価グレードの価格は209万8800円だが、円安にならなければ、199万8800円といったインパクトの強い価格設定も可能だった。フロンクスも、低価格路線を狙うのは難しい。そこで全方位モニター付きのカーナビまで標準装着するなど装備を充実させ、内装の造りも上質にして、販売店によると価格を254万1000円と高めの設定にしている。
このように円安傾向の今は、低価格路線を進めるのは難しいが、WR-Vやフロンクスの装備と価格は買い得な設定だ。
注目のホンダWR-Vとスズキフロンクス
WR-Vは前後席ともに居住性が優れ、荷室も使いやすく、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も充実させて価格が200万円台のXも用意する。Xは中級のZに比べて18万円相当の装備を省いたが、価格は25万800円も安い。本来ならXの価格は210万円を超えたが、買い得度を表現するために前述の209万8800円に抑えた。
フロンクスも同様で、価格は250万円を超えるが、全方位モニター付きのカーナビに加えて、後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットモニター、ヘッドアップディスプレイ、電動パーキングブレーキ、ワイヤレス充電器、合成皮革のシート生地、アルミホイールなどを標準装着する。
価格を高めた以上に装備を充実させ、ミドルサイズSUV並みの満足度を得られる。
これらのコンパクトSUVは、価格の割安度を重視するから、輸入販売という方法を採用した。従って円安の今でも、ほかの車種に比べると、価格を敢えて割安に抑えているのだ。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/日産、ホンダ、スズキ