停車するとエンジンが止まり、無駄なガソリンの消費を抑えるのが「アイドリングストップ」だ。ブレーキを放すと自動的にエンジンが再始動するので、ドライバーは特に意識することなく使うことができる。ところがハイブリッドを除くガソリン車での採用が減ってきている。コンパクトカーやミニバンなどで、採用が見送られることが多い。これはどういうことなのだろうか?
画像ギャラリー停車するとエンジンが止まり、無駄なガソリンの消費を抑えるのが「アイドリングストップ」だ。ブレーキを放すと自動的にエンジンが再始動するので、ドライバーは特に意識することなく使うことができる。ところがハイブリッドを除くガソリン車での採用が減ってきている。コンパクトカーやミニバンなどで、採用が見送られることが多い。これはどういうことなのだろうか?
多くのガソリン車がアイドリングストップを廃止
信号待ちの時などにアイドリングを停止するアイドリングストップは、2000年代に入ると普及が進み、2010年以降は標準装着が常識になった。
ところが2020年に近付くと、アイドリングストップ装着車が減り始めた。例えばノーマルエンジンを搭載するコンパクトカーの場合、以前のヴィッツ(現在のヤリス)やフィットなどは、アイドリングストップを装着していた。
それが今は廃止されている。ミニバンでは、セレナは今でもノーマルエンジン車にアイドリングストップを装着するが、ノア&ヴォクシーやステップワゴンには備わらない。
ガソリン代を節約しても、高額なバッテリー交換費用で相殺される
このようにアイドリングストップ装着車が減った背景には複数の理由がある。メーカーの開発者に尋ねると以下のように返答された。「街中でアイドリングの停止とエンジンの再始動を頻繁に繰り返すと、煩わしく感じるお客様も多い。制御をカットして使われる場合もあるため、装備自体を廃止する車種が増えた」。
それでもアイドリングストップが欲しいユーザーはどうなるのか。開発者は「今は売れ筋車種の大半に、ハイブリッドが設定されている。アイドリングストップを希望するお客様は、今ではハイブリッドを購入している」と返答した。
またアイドリングストップを装着すると、エンジンを頻繁に始動させるから、バッテリーの負担が増える。そこでアイドリングストップ装着車には、非装着車に比べて容量の大きなバッテリーを指定している車種があり、交換時の出費も増える。
容量が増えてもバッテリーの寿命や交換タイミングは同じだから、アイドリングストップの作動でガソリン代を節約しても、バッテリー交換時のコストアップで装着車がトータルでは割高になってしまうことも多い。
アイドリングストップのニーズを吸収する安価なマイルドハイブリッド
それでもユーザーによっては、信号待ちでアイドリングすること自体に、後ろめたさを感じることがある。ハイブリッドなら前述のようにアイドリングも止まるが、価格がノーマルエンジン車に比べて35~50万円は高い。信号待ちの多い都市部を中心に、ノーマルエンジン車におけるアイドリングストップのニーズが消滅したわけではない。
街中でアイドリングの停止とエンジンの再始動を繰り返すと煩わしい、という批判は、モーター機能付き発電機の採用で解決する。1個の小さなモーターで、アイドリングストップ後の再始動、減速時の発電、エンジン駆動の支援を行う機能だ。
このタイプでは、モーターがベルトを介して再始動させるため、セルモーターのような金属音や振動を発生させない。マイルドハイブリッドとしてスズキの軽自動車を中心にコンパクトな車種に採用され、低燃費と快適性を上手に両立させている。
文/渡辺陽一郎(わたなべ よういちろう):自動車月刊誌の編集長を約10年間務めた後、フリーランスに転向した。「読者の皆様にケガをさせない、損をさせないこと」を重視して、ユーザーの立場から、問題提起のある執筆を心掛けている。執筆対象は自動車関連の多岐に渡る。
写真/トヨタ、スズキ、Adobe Stock(アイキャッチ画像:tarou230@Adobe Stock)