肉や海鮮とたっぷり野菜をとろみでまとめた「あんかけラーメン」。具材の旨みたっぷりのあんはラーメンのフタにもなっていて、いつまでもハフハフの熱々が食べられる冬にこそ真の魅力を発揮する一杯です。口の火傷に注意しつつ、いざすす…
画像ギャラリー肉や海鮮とたっぷり野菜をとろみでまとめた「あんかけラーメン」。具材の旨みたっぷりのあんはラーメンのフタにもなっていて、いつまでもハフハフの熱々が食べられる冬にこそ真の魅力を発揮する一杯です。口の火傷に注意しつつ、いざすすらん!
堀切菖蒲園『中華タカノ堀切店』
おいしいものは時にシンプルだ。凝った具材を使うでもなし、SNS映えを狙うでもなし。餡の味付けは基本塩コショウだけ。けれど心惹かれるのはスープに鶏、豚、牛とトリプルのダシで深みを出すとか、さりげなく自家製麺を使うとか、味を支える愚直な仕事があるから。
餡のとろみ加減もまた絶妙で「とろりと食べやすくなるよう、やや緩めに仕上げています」とは星野店長。
やさしい旨さにグッとくるが、一味入りの自家製ラー油を入れるとピリッと締まってまた惚れ直す。品書きを見ればラーメン500円、餃子300円という値段にも惚れ惚れ。庶民の胃袋を支える店は、地元のヒーローのような存在なのだ。
新高島平『珍来 公園前』
昭和51年から続く同店で35年前に店主の山道さんが始めたのが人気のあさりラーメンだ。カンカンと中華鍋を振る手つきはお手の物。大粒の生のアサリをたっぷり使い、油に入れて火を通す。ジュワワワと音が変わる、この火加減がポイントらしい。
ぷっくりと口を開けた殻付きのアサリが見るからに旨そうだ。豚と鶏のガラを使い、濁らせないように弱火でていねいに炊くスープ。角の取れた旨みのある醤油を使う。
とろみのあるスープをひと口啜ると、アサリから放出されたダシとも相まってなんとも言えないコク深さ。よく絡んで啜りやすい中細の麺もぴったりだ。餡の中に入るにらの風味、玉ねぎのシャキシャキした食感もよし。
熱々を夢中になって食べると横に山となるアサリの殻の多さにもびっくりするはず。満足度も食べ応えも十分。醤油味が基本だが、実は味噌味、塩味を注文することもOK。う~ん、味噌も食べたい!
自由が丘『寿福』
地元じゃ名の知れた行列店。一番人気のレバニラ炒めは町中華のそれの最高峰レベルだと密かに思っているのだが、定番の「あんかけもやしそば」も冬の大本命だ。
醤油味のスープにたっぷり浮かぶモヤシとニラ、箸を入れると太く長くコシのある太麺にとろんと絡み、小気味いいコショウのパンチが舌に広がれば……にやりと口角が上がる。うーん、やさしいだけじゃない、パシッと輪郭があるおいしさというのかなあ、味の匙加減が素直にすごい。
そんな一朝一夕にできない旨さは調理に使う醤油も味噌も全て自家製という手間を惜しまぬ姿勢から。創業66周年、2代目の池田さんが先代の教えを頑なに守っている。早朝からの準備はもちろん、休みの日も仕込みで店に通う忙しさ。
なのに「当たり前を当たり前に続けるだけ。お客さんが喜んでくれるから大変とは思わなくなったね」。生き様がそのまま味に。食べればわかる。
池袋『新珍味』
目の前に輝く黄金の餡の海。下に潜んだ麺をがっちり掴んで持ち上げれば、餡が絡みまくってズシリと重い。安い割り箸だったら折れるんじゃないだろうか……そう、スープの上に餡が乗るのではなく、スープそのものが全部とろとろの濃厚餡。この店の名物、70年前の創業時から愛される特製ターロー麺の特徴だ。
実は初代は台湾の有名な革命家。2代目の金田さんは13年ほど前に本人(当時91歳!)に直接作り方を教わり、伝統の味も店もそのまま受け継いだとか。基本のレシピを守りつつ、現在は麺がのびにくいよう太めに改良するなどさらに旨さを追求した。
豚肉や白菜などの具にとろみを付けて卵でとじた餡は程よい酸味で、にんにくの香味も効いたバランスのいい味。後からコショウと唐辛子の辛みがじわじわやってきて、完食すれば体の芯までぽっかぽか。革命家直伝の名物麺は、冬こそ食べたいアツい味だ。
『おとなの週末』2024年2月号より(本内容は発売時のものです)
…つづく「東京、本当うまい「町中華のラーメン」ベスト6店…なんと一杯《600円》、スープ絶品《浅草・大森・人形町・大井町・千歳烏山・清澄白河》で覆面調査隊が発見」では、あまたひしめく町中華のなかから、おいしいラーメンの店を紹介します。