「この湾には、エウメ川、マンデオ川、べレレ川という3本の川が入っている。その養分が植物プランクトンを育て、貝や魚を大きくしているのさ」
そして、「森は海の母さん」といって、片目をつぶって笑いました。わたしはすっかり、お株をうばわれたような気分でした。
雨が降ってきました。霧のような細かい雨です。前ぶれもなく、よく雨が降るのです。
「ガリシア名物オルバーリャ(小ぬか雨)ですよ。これが森を育て、海を豊かにしてくれるんです」
そう言うと、ビクトルさんはゴム合羽を着て、また出漁していきました。
…そう聞いたカキじいさんこと畠山重篤さんは、今度はスペインにある原生林の森に向かいます。到着した森で広がっていたのは圧巻の光景でした。「日本の「カキじいさん」が絶句…旨いカキを探しに旅したスペイン「ロブレの森」でみた「黒々としたもの」の正体」ではその詳細を綴ります。
連載『カキじいさん、世界へ行く!』第7回
構成/高木香織
●プロフィール
畠山重篤(はたけやま・しげあつ)
1943年、中国・上海生まれ。宮城県でカキ・ホタテの養殖業を営む。「牡蠣の森を慕う会」代表。1989年より「海は森の恋人」を合い言葉に植林活動を続ける。一方、子どもたちを海に招き、体験学習を行っている。『漁師さんの森づくり』(講談社)で小学館児童出版文化賞・産経児童出版文化賞JR賞、『日本〈汽水〉紀行』(文藝春秋)で日本エッセイスト・クラブ賞、『鉄は魔法つかい:命と地球をはぐくむ「鉄」物語』(小学館)で産経児童出版文化賞産経新聞社賞を受賞。その他の著書に『森は海の恋人』(北斗出版)、『リアスの海辺から』『牡蠣礼讃』(ともに文藝春秋)などがある。