オフロード性能と街乗り性能を両立
日産は初代テラノを開発するにあたり、完全新設計とするのではなく、ダットサンピックアップ4WD(D21)をベースにクロカン化することを決定。限られた予算のなかではこれが最適解だった。この手法はハイラックスピックアップをベースにクロカン化したハイラックスサーフと同じだ。
しかしなんだトラックベースか、と侮るなかれ。初代テラノのコンセプトは、「オフロードも街中も快適に走れる」というもので、快適な乗り心地を確保することが絶対命題だった。それに合わせて、フロントサスペンションは乗り心地とロードホールディング性のよさで定評のあるダブルウィッシュボーンをダットサンピックアップから流用したものの、リアサスペンションは当時開発中だったサファリ(Y60型・1987年デビュー)用の5リンクを先行投入している。これにより、オフロードでのトラクション性能が向上と街中での快適な乗り心地を両立させていた。
洗練された都会的なデザイン
初代テラノの真骨頂と言えば、そのエクステリアデザイン。ライバルのパジェロ、ハイラックスとも骨太で頑強なイメージのあるデザインを採用し、それがユーザーにウケていたが、日産はまったく違ったコンセプトで開発を進めた。
初代サファリの都会的で洗練されたデザインを手掛けたのは、日産デザインインターナショナル(NDI)。ちなみにNDIは、現在日産デザインアメリカ(NDA)となっている。日産は、クロカンのノウハウが豊富な本場アメリカでデザインすることを決定したのだ。
まず目を引くのがリアの三角窓。これだけでも斬新なのだが、クロカンとしては異例なフラッシュサーフェイス化されたボディは、前後の力強いフェンダーラインと融合し、取って付けた感は皆無。
四角い=武骨となりそうだが、まったく逆の効果(洗練)持っていたのが初代テラノの凄いところで、当時、ユーザーの間でも初代テラノの洗練された都会的なデザインは話題になっていた。筆者の職場の先輩も初代テラノの後期モデルを新車で購入(1993年)。「ハイラックスサーフとどっちにするかかなり迷ったけど、テラノのカクカクした四角いデザインが購入の決め手となった」というように、四角いのに洗練されたデザインは好評だった。
ノーズ先端の穴が素敵!!
街中で武骨なクロカンを乗ることがステータスだった時代に突如洗練されたデザインが登場したのだから日本のユーザーにとってインパクト抜群だったのは当然だろう。当時大学1年生だった筆者も衝撃を受けた。クロカンには興味がなかったが、初代テラノのデザインには驚いた。
初代テラノのデザインで一番驚いたのは、フロントノーズ先端の穴(細かくてすみません)。正式には3連スリットと言ったほうがいいのかもしれないが、これがポルシェ924カレラGTのノーズ先端のエアダクトのように見えて、スポーティかつレーシーな雰囲気に感じていた。
エクステリアの印象に大きく関係する背面タイヤ。これはありとなしが選べたが、当時のクロカン=背面タイヤのイメージもあり、多くのユーザーはタイヤを背負っていた。洗練されたデザインに武骨な背面タイヤというギャップも初代テラノならではだろう。