苦みの余韻はそのままにホップの香りがガツン
まずは、「PUNK IPA」と「Teenage Punk IPA」から。
「PUNK IPA」は、グレープフルーツやライチのトロピカルとキャラメルな香りのあとにくるシャープな苦みがたまらない。久々に飲んだけど、やっぱりおいしい。これぞ名作といったところだ。
続いて「Teenage Punk IPA」をいただく。スタイルはDDH West Coast IPA(ダブルドライホップ ウエストコースト アイピーエー)。色はこちらが少し濃く、その見た目通りホップの香りをガツンと感じたあと、苦みがしっかりやってくる。
麦芽とホップの構成はPUNK IPAのレシピを元にしながら、ホップ(シトラ、ネルソンソーヴィン)を増量。さらにリワカというホップを新たに投入している。それだけでなく、発酵中のビールにホップを投入して香りづけをするドライホッピングという手法を行うことで、香りがしっかり感じられるようにしているのがお見事。
PUNK IPAよりもフルーティな香りが広がり、幾重に重なるホップ感もある、クラフトビール好きはニンマリする味ではなかろうか。しかも、PUNK IPAよりアルコール度数が1%高い6.5%とあって飲み応えあり。
本来だとここで、こういう料理が合いそうというペアリングの話をするのだが、「Teenage Brewing」では、ペアリングを音楽で提案している。それぞれのビールの缶の側面に表記されているのだ。今回はそれに準じて楽しむとしよう。
「Teenage Punk IPA」に書かれていたペアリングミュージックは、SEX PISTOLSのアルバム『Never Mind the Bollocks,Here’s tha SEX PISTOLS』。SEX PISTOLSの最初で最後のオリジナルアルバムである。PUNK IPAで感じる初期衝動のようなものをより増幅させ、ちょっと尖った気持ちでグビッといきたくなる。
もう1枚書かれていた。モグワイが1997年にリリースした『Young Team』だ。BREWDOGがあるスコットランド発のバンドによるデビューアルバム。このCDのジャケットには富士銀行の看板を配されていることから、日本との融合も意識した?(日本盤では看板は黒塗りだったとか)
ピストルズと違って、こちらはポストロック。「Young Team」というタイトルもそうだが、発表当時のメンバーの平均年齢が18歳と考えると、これもまた違った形での初期衝動である。
収録曲の多くが静と動を感じる構成になっていて、「Teenage Punk IPA」を飲む際に感じるトロピカルな味わいから押し寄せる苦みがまさにそれ。静寂を突き破る轟音の如し。30代のころだったらピストルズで楽しんで飲めていたが、40代に入った今ならモグワイのような楽しみ方も理解できる。
というのも、「Young Team」の方がアルバム1枚を聞いているうちに酔いがまわり、音に没入していく心地よさがあったからだ。あれはなんともいえない体験だった。イヤホンやヘッドホンで聞いていたらちょっとヤバかったと思う。
ティーンエイジファンを公言しながらどうしてもフードと合わせがちで、この楽しみ方ができていなかったのですが(ごめんなさい)、音楽とちゃんと向き合って飲むとかなり面白かった。