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数々の名店で腕を磨いた堀田シェフ「奈良の観光課題に取り組みたい」

そして、いよいよ夕食の時間。その前に、1つ星を獲得したレストランを閉じ、どうして奈良公園にオーベルジュを開業したのか、オーナーシェフの堀田大樹(ほりた・だいき)さん(42歳)に聞いてみることにした。

オーベルジュを開業した経緯を語る堀田大樹シェフ

堀田シェフは、イタリア・ボローニャのレストランでセカンドシェフを務めた後、奈良で人気を博したイタリアン『Ristorante i-lunga(リストランテ イ・ルンガ)』や、京都のフレンチ『L'EMBELLIR Naoto Kishimoto(ランベリー ナオトキシモト)』などで経験を積み、奈良・東生駒にイタリアンレストラン『communico』を開業した経歴を持つ。

「独立した当初からレストランを開業することが目標では無く、料理人としてどのように社会貢献していけるのかということが重要でした。宿の立ち上げの相談を頂いたとき、若草山の原生林に囲まれた最高のロケーションを見て、この場所ならやれると確信しました。レストランではなく、オーベルジュという形をとることで、宿泊客が少ないという県の観光課題に取り組み、奈良の食文化の向上の一翼を担えるような存在を目指していきたいと思ったんです。そして山焼きを望むこのエリアだからこそ、そこから着想を得た、炎を使って調理する薪火料理を提供しようと決めました」

今回、オーベルジュ内に薪火レストランを開店するために、わざわざ“薪火の魔術師”と呼ばれるシェフがいるスペイン・バスク地方のレストラン『Txispa(チスパ)』で薪火料理を学んだそうだ。

一方で、このエリアで宿を展開するからこその苦労もあるという。

調理中の堀田シェフ

「このエリアに食を求めて泊まりに来るというイメージまだまだ薄いと思います。ですが、奈良には深い歴史があり、素晴らしい食文化がある。それをオーベルジュ通じて発信していけたらと。近隣の京都と比較すると客単価が低いエリアであることも課題ですが、僕が成功することで、若手シェフの方たちにこの地でも料理人が活躍できるというイメージをもってもらい、未来へと繋げていけたらと思っています」と、意気込む。

奈良の伝統食材を生かし、薪火や発酵のテクニックを駆使した料理が登場

そんなシェフが作る料理は、原始的な薪火料理や伝統的な調理方法に現代的なアレンジを加えたメニューが豊富だ。イタリア、スペイン、フランス料理を学んだことで、ジャンルにとらわれない奈良食材を生かした料理を提供するようになったという。さらに、発酵技術を取り入れることで、食材が手に入らない季節もその前のシーズンにとれた食材をうまく活用しているそうだ。

「さつまいも、カチョカバロ」

四季によって料理が入れ代わるコースのはじまりは、奈良県産美和(みわ)馬の馬肉がサクサクの蕎麦粉のガレットとマッチした一品や、さつまいもと岡山県吉田牧場のチーズ「カチョカバロ」を合わせた、豊かな甘みが広がるひと口サイズのメニューなど、アートのような3種のアミューズ(小皿料理)が登場。見た目にも華やかな料理にスタートから思わずワクワクさせられる。

「美和馬、ビーツ」

自慢の「三輪(みわ)手延べパスタ」には、日本麺のルーツといわれる奈良の伝統的な「三輪そうめん」の製法を用いて仕上げた「小西勇製麺所」の麺を採用。そこにイタリアの菜花、チーマディラ―パを和え、アオリイカを添えた逸品だ。ツルっとしたのど越しとコシのある食感、チーマディラ―パのほろ苦さがなんともクセになる。

「三輪手延べパスタ、アオリイカ、チーマディラ―パ」

メインディッシュは、さまざまなメディアで取り上げられている滋賀県草津市の精肉店「サカエヤ」の店主で、精肉士として全国でも名高い新保吉伸(にいほ・よしのぶ)さんが手当てした経産黒毛和牛サーロインだ。60日ほど熟成し薪でローストした肉は、最大限にうま味が引き出され、滋味深い味わいが楽しめる一方、後味は程よくさっぱりとしていて、胃がもたれないのも心地よい。

「サカエヤ、新保さんが手当てした経産黒毛和牛サーロイン」

一皿一皿にこだわりの生産者の食材を使用し、伝統的な技法を使いながらも、遊び心あふれる要素を取りいれた独自の料理を展開する堀田シェフ。古くから脈々と受け継がれる奈良の食文化と、現代を生きるシェフならではの新しいテクニックを同時に体感できる、感慨深い一晩を過ごすことができた。

「縞鯵、ターニップ、レタス」
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中村友美
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