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北国の郷愁と手作り感をラーメンに

目指したラーメンの基本コンセプトは、「いつかどこかで食べた懐かしさ。朴訥とした北国の郷愁と手作り感」でした。最初に着手したのは麺でした。ヒントを得たのは日常的に親しまれてきた八戸の郷土料理「ひっつみ」。手間はかかりますが、ひと玉ひと玉を手もみをすることによって、ひっつみ特有のもちもちとした食感と舌ざわりを表現。小麦粉は岩手県二戸産の「南部小麦」と「ねばりごし」を使用し、小麦の旨みも生きた、存在感のある麺に仕上がりました。

麺は太麺。八戸の郷土料理「ひっつみ」のもちもちした食感を意識し、ひと玉ひと玉手もみした

スープの決め手となる食材は、宮内庁にも納められる六戸産地鶏「シャモロック」。シャモとプリマスロックの品種を掛け合わせたシャモロックは、親鶏のよい部分だけを引き継いだ濃厚な味わいです。豚は青森は十和田産の銘柄豚「ガーリックポーク」のゲンコツ(膝の関節部分)と、ロースを使用。

地スープの主食材には宮内庁にも納められている六戸産の地鶏・シャモロックを

隠し味に芳醇な甘みとまろやかさが出る小川原湖産(青森県上北郡東北町)のモクズガニをはじめ、焼き干し、干しイカ、干し貝柱など、青森南部地方の食材を中心とした構成です。

地元・小川原湖のモクズガニやシジミ、青森南部の海産物も取り入れた

あらためて“ラーメンの鬼”のすごさを実感

タレは、コンセプトの「懐かしさと郷愁」を表現するうえで重要なポイントで、醤油の風味で懐かしさを演出しました。ベースとなる醤油は岩手県陸前高田産の2年もろみ熟成醤油を使用。もろみの風味を最大限に生かすため、火入れをしない生醤油を取り寄せ、みずから火入れを行いました。もう一つのポイントは小川原湖産のシジミから抽出したエキス。貝自体の旨みがインパクトの強い醤油に丸みと深みを加えます。まさに、一歩先を行くラーメンでした。

ラー博の「新ご当地ラーメン創生計画第2弾」で誕生した「八戸支那そば」。ラー博30周年企画で“幻の味”が復活

チャーシューには収穫量日本一のニンニクを餌として食べさせる十和田産「ガーリックポーク」を使用。食感の違いを楽しんでもらえるようモモ肉と肩ロースを1枚ずつ配置。メンマは麺の食感との一体感から、短冊状のものを使用。彩りに緑鮮やかな小松菜とネギを加えました。

こうして実現した「八戸麺道 大陸」でしたが、店は2009年4月、惜しまれながら閉店しました。

箭内さんは佐野実さんの命を受け、2014年2月より、「支那そばや」の総料理長に就任。その2カ月後に佐野さんは逝去されました。振り返ると、こんなに素晴らしい食材と技術が注ぎ込まれたラーメンが2002年に誕生していたのです。あらためて“ラーメンの鬼”佐野実さんのすごさを感じました。

佐野実さんのもとで修行する箭内さん
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『ラー博30年 新横浜ラーメン博物館 あの伝説のラーメン店5...
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おとなの週末Web編集部
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