ここだけの深い味わいの鍵は、“手造り”にあり
そのためのキーワードその一が「手造り」だ。現在、米麹造りは95%以上が機械化されているというが、中村酒造場ではすべての麹を麹蓋という小さな木箱を使い、人工的な熱源も使わず、一枚一枚時間をかけて手入れをしていく。制約のある中で健全な麹を育てるために頼りとするのは、手触りであり、香りであり、いわば五感のセンサーで造る酒なのである。
そしてもうひとつのキーワードが「微生物」。米麹作りに欠かせない種麹菌。発酵に必要な酵母。「ここにしか出せない味」を目指すのなら、蔵に棲みついている菌を生かしたい、そう慎弥さんは考えた。日本酒などで蔵付き酵母による発酵は知られるが、のみならず、麹室に棲み着いた同蔵だけの種麹菌も使用したい。
5年をかけて「室付き麹」も実現させた。代表銘柄『なかむら』の新しい試みとして生まれた『なかむら三種混合麹』では室付きの白麹、黒麹、黄麹のハイブリッドな麹菌を使用。ひとつの液体の中に温度帯によって三種の個性が顔を出す、なんとも魅力的な味わいだ。
蔵オリジナルの微生物とも語らいながら、じっくり手造りされる同蔵の焼酎は、いずれもなめらかで、まろやかな口当たり。やさしい味わいが印象的だ。そこには霧島の大地が生む、美しい水や米、さつまいもも息づいている。
慎弥さんの言葉を借りればまさに“風景の浮かぶ酒”。もちろん頭の中にあるのは「シャリ」だけではない。まだまだ続いていく挑戦が楽しみだ。
6代目杜氏の中村慎弥さん。効率化しては造り得ない「ここにしか出せない味」を手仕事にこだわり追求している。
『中村酒造場』@鹿児島県霧島市
[名称]『中村酒造場』
[住所]鹿児島県霧島市国分湊915
[電話]0995-45-0214
撮影/鵜澤昭彦、取材/池田一郎
※月刊情報誌『おとなの週末』2025年8月号発売時点の情報です。
※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。
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