架け替えられた「船路橋(ふなじばし)」
かつての都電芝浦工場は、再開発によって芝浦アイランドへと生まれ変わった。都電が廃線になると、都バスの自動車工場へと変わり、その工場は1991(平成3)年に江東区へ移転されるまで操業した。工場へ行くには、”芝浦西運河”を渡る必要があり、そこには「船路橋」という専用橋が架けられていた。この橋は、都バスの工場が移転された後も数少ない都電の遺構として残置されていたが、同地の再開発により2007(平成19)年に廃橋となった。
再開発によって人道橋として架け替えられた船路橋は、かつての都電専用橋であったことを物語るように、橋の路面にはタイルによってレールが描かれている。橋のたもとには、港区立船路橋児童遊園という名の公園があり、そこには船路橋の由来が記された石碑が置かれている。
都内にある都電遺構は、ここ以外にも公園や遊歩道になっている場所がいくつかある。廃止から50年以上が経過した今、道路の下に眠る都電のレールは、どれほど存在するのだろうか。見えぬ轍を追い求める調査は、これからもつづく。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。
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