廃止から36年、遊歩道としての活路
人々の目には、「錆びた古めかしい鉄橋」としか映っていなかった晴海橋梁。廃止から36年も経過すれば、この橋梁の使途や存在理由を知らないのも無理はない。それでも、貴重な鉄道遺産として保存を希望する声や、公園などに活用できないものか、といった要望が多く寄せられていたという。
2021(令和3)年になると、東京都港湾局より「歴史的価値を残しながら遊歩道橋に改修し、遊歩道として生まれ変わらせる」ことが発表された。それから4年、耐震補強などの改修工事が行われ、つい先ごろとなる2025(令和7)年9月17日から、江東区豊洲2丁目にある春海橋公園の一部として、その利用が開始された。
春海橋公園は、江東区立豊洲公園や周辺の商業施設などとともに一体的に構築された都立の海上公園で、東京都港湾局が所管する「ふ頭公園」に分類される。晴海橋梁は、東京都港湾局の専用線として使われていただけに、収まるところに収まったというわけだ。
遊歩道化にされた橋梁の歩行面は、当時のレールをそのままにウッドデッキを敷き詰めたフラットな構造に仕上げてあった。鉄橋のアーチ部は、完成当時の色で塗装が施され、夜間には橋梁全体をライトアップする演出が行われる。
橋梁の両端部に設置される案内板には、専用線や橋梁に関する説明はもとより、その裏側には当時使用していた貨物列車の編成がイラストで描かれ、使用していたディーゼル機関車のナンバープレートなどのレプリカを取り付けるなど、鉄道ファンの心をくすぐる遊び心には、思わず感激してしまった。
豊洲には、このほかにも同じ東京都港湾局・深川線の鉄道遺構も点在しており興味は尽きないが、それはまたの機会にしたいと思う。
文・写真/工藤直通
くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。