”創造性が高いラーメンを応援したい”
レイラさんにとっての「TRY」とはどういうものなのか。また審査基準はどうしているのだろうか。
「話題だから、映えるからといった忖度はせず、私はずっと残っていてほしいと思えるお店に投票するようにしています」
情報が手軽に入手できる時代、「TRY」のあり方を考え続けているのだそう。
「SNSなどが発達する現在、今やみんなが評論家とも言える時代ですよね。影響力や拡散力で言えばYouTuberさんたちのほうが大きいと思うんです。そんな中で『TRY』や審査員の存在意義って、読んでくださる方は何に期待されているのだろうと考えた時に重要なのが『TRY』にしかない視点です。審査員それぞれのカラーが色濃く出せたらユニークなのではと思っています。
結局、好き嫌いはあくまで好みの問題でしかなく、美味しくないラーメンというものはありません。今の審査員は長らく全国のラーメンを食べ歩いている人がメインで、歴史などを系統立てて理解して、表層的な部分だけではなく、お店の雰囲気や期待感も含めて選んでいます。私は料理をすることも好きなので、独特の食材や調理法を取り入れていたり、海外の料理の要素が入っていたり、創作性が高いラーメンは応援したくなります」
審査員=大食いでない
「余談ですが、実はTRY審査員の半数が女性になってほしいと常々思っています」と話すレイラさん。その思いはどんなものなのだろうか。
「『審査員=大食いでないと無理』というイメージがつかないように気をつけていきたいのです。『1日何杯食べた女性!』という、とてもアイキャッチングでわかりやすいメディアでの“盛られ方”をされていった方々もたくさん見てきましたが、時代とともに意識を変えていけたら。1日1杯でも大切に食べて、独自の視点を持ってラーメン愛のある文章が書ける方が増えたらいいなと思います」
多くの人の心を救ってきたラーメン
最後にレイラさんにラーメンになぜここまで惹かれるのかを聞いた。
「生きていれば何もない方というのはいなくて、(親しい人との死別など)思い出したくない暗黒時代もたくさんありました。そんな時でも、ひとりカウンターですするラーメンスープのあたたかさやだしの香り、涙と一緒に麺をすすっていても、ほうっておいてくれる優しさ……。ちょっとした背徳感など、さまざまな要素の相乗効果があり、ラーメンには他のものでは変えられない、抑えていた感情を一度決壊させてから修復するような作用があると思っています。スープと一緒に悲しみも飲み込んで、お店を出た時には『よし、生きよう』という元気が湧いてきます。ラーメン屋さんは、日々淡々と仕事をこなしているように見えて、私だけでなく、実は多くの人の心を救ってきたのではないでしょうか」