日光駅から中禅寺湖畔まで整備された観光路線網
現在では、路線バスかマイカーなどでしか行くことのできない中禅寺湖畔。今から65年前となる1960(昭和35)年からの8年間は、国鉄(現JR)と東武鉄道の日光駅から中禅寺湖畔までの約12kmを、4つの路線を乗り継ぐことで往来することができた。日光駅~馬返〔うまがえし〕駅までを日光軌道線(路面電車)、馬返駅~明智平駅までをケーブルカー(日光鋼索鉄道線)、明智平駅~展望台駅と茶ノ木平駅~中禅寺温泉駅までは2つのロープウェイを乗り継ぐ、観光路線網が形成されていた。
この4つの路線のうち、現在も営業を続けているのが明智平駅~展望台駅のわずか300mを結ぶ「明智平ロープウェイ」だ。残る3路線はというと、日光軌道線は1968(昭和43)年2月に、ケーブルカー(日光鋼索鉄道線)は1970(昭和45)年3月に、中禅寺温泉ロープ―ウェイは2003(平成15)年3月に、それぞれ廃止された。これらは、1960(昭和40)年の第ニいろは坂の開通によって、その乗客のほとんどを路線バスやマイカーに奪われた結果の廃線だった。
それぞれの路線は、軌道線が1910(明治43)年に日光電気軌道(のちに東武鉄道に合併)として開通、ケーブルカーは1932(昭和7)年に日光登山鉄道(のちに日光軌道に合併)として開通、中禅寺温泉ロープウェイは1960(昭和35)年に東武興業が新たに開通させた路線だった。現在も営業を続ける明智平ロープウェイは、日光登山鉄道によって1933年(昭和8年)に開通したものの、先の大戦中は営業休止となり、戦後の1950(昭和25)年に東武鉄道が営業を再開させたものだ。現在は、グループ会社の日光交通が運営している。




