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ケーブルカーの廃駅跡

日光といえば小学6年生のときに「林間学校」を経験された方もいらっしゃることだろう。就寝時に枕投げをして廊下に正座させられたことも、今となっては良き思い出だ。道中、貸切バスで中禅寺湖や奥日光を訪れた記憶の中に、原っぱのなかにポツンとあった馬返駅の建物(廃駅)が、今も記憶の片隅に残る。子ども心に「オトナになったら廃駅跡を見に行くぞ!」と思っていたものの、その数年後には解体されてしまった。

現在もケーブルカーの鉄道遺構は、軌道敷跡やトンネルなどが山中に遺されている。手軽に見ることができる廃線跡としては、明智平に遺されるプラットホーム跡だろう。第ニいろは坂の明智平ロープウェイ駅に隣接する有料駐車場の奥に、ケーブルカーの廃駅跡がある。2017年頃までは、ケーブルカーの旧駅と一体として造られた明智平パノラマレストハウスが建っていたが、老朽化のため解体された。その跡地は、アスファルトで舗装されて更地になっている。

その更地の奥に柵があり、奥をのぞきこむと経年劣化したコンクリート構造物が見える。朽ちた構造物の一部には、階段状のホーム跡が見てとれる。周囲を見渡すと案内板があり、当時の様子を伺い知ることができる写真とともに説明が記されていた。なお、この場所を訪れるには、過去には中禅寺湖側からもアプローチできたが、現在は第ニいろは坂を麓側から上ってこないとアクセスできない一方通行になっている。

これからの紅葉の季節、明智平ロープウェイから見る中禅寺湖や男体山も良いが、ケーブルカーの廃駅跡を眺めながら、当時の観光ルートに思いを馳せてみるのもいかがだろうか。日光軌道線や中禅寺温泉ロープウェイの廃線跡の話は、またの機会に。

日光鋼索鉄道線〔ケーブルカー〕の明智平駅跡。廃止から55年を経た今も、その痕跡は遺されたままだ=2019年11月18日、日光市細尾町
廃駅跡から伸びる軌道敷をたどれば、麓の馬返駅までの間に170mと60mのトンネル(隧道)が2箇所遺されている=2019年11月18日、日光市細尾町
現地に設置される案内板より=2019年11月18日、日光市細尾町
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文・写真/工藤直通

くどう・なおみち。日本地方新聞協会特派写真記者。1970年、東京都生まれ。高校在学中から出版業に携わり、以降、乗り物に関連した取材を重ねる。交通史、鉄道技術、歴史的建造物に造詣が深い。元・日本鉄道電気技術協会技術主幹、芝浦工業大学公開講座外部講師、日本写真家協会正会員、鉄道友の会会員。

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