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羊肉の代わりに小豆を使った羊羹

新嘗祭の日、ご昼餐とご夕餐のあとには、陛下と雅子さまは大膳課が作った和菓子を召し上がる。

和菓子は、小豆のこし餡に白い模様生地を入れて蒸した、羊羹の「田の憩」。それに、くちなしの実で黄色に色づけして蒸した、軽羹の「実り」。どちらもたいそう美しく、国民の食を大切にされる天皇家の思いが込められた銘がつけられている。

羊羹は、今では一般の人々も身近に親しんでいる和菓子である。羊羹は鎌倉から室町時代に中国から禅僧によってもたらされた。もともと中国の羊羹はお菓子ではなく、羊の羹(あつもの)。つまり、羊の肉を使ったスープの一種であった。しかし、禅宗では肉食が禁じられていたため、羊肉に見立てて小豆を使ったのが、のちの羊羹の原型になったといわれる。

軽羹は、江戸時代半ばに薩摩藩で生まれたという。どちらも美しくやさしい色合いの和菓子である。国民のために長い祈りの日をすごされる陛下と雅子さまにとって、心安らぐひとときのお伴になることであろう。(連載「天皇家の食卓」第45回)

天皇、皇后両陛下 提供:宮内庁

参考文献:『宮中歳時記』(入江相政編、小学館文庫)、『宮中 季節のお料理』(宮内庁監修、扶桑社)

※トップ画像は、春の園遊会での天皇、皇后両陛下=2025年4月22日、東京・元赤坂の赤坂御苑(C)JMPA

文/高木香織

たかぎ・かおり。出版社勤務を経て編集・文筆業。皇室や王室の本を多く手掛ける。書籍の編集・編集協力に『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(ともにこう書房)、『美智子さまに学ぶエレガンス』(学研プラス)、『美智子さま あの日あのとき』、『日めくり31日カレンダー 永遠に伝えたい美智子さまのお心』『ローマ法王の言葉』(すべて講談社)、『美智子さま いのちの旅―未来へー』(講談社ビーシー/講談社)など。著書に『後期高齢者医療がよくわかる』(共著/リヨン社)、『ママが守る! 家庭の新型インフルエンザ対策』(講談社)。

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