蕎麦の楽しませ方は店それぞれ
岡「私が印象的だったのは『東白庵かりべ』。店主が『天ぷら蕎麦は天ぷらを乗せてこそのおいしさがある』と話していて、なるほどと思った。別盛りも増えたけど、若いお客さんはツユに入れていいか迷うことも少なくないとか。そんな人に『乗せていいんだよ』と伝えたいそう。蕎麦屋さんって蕎麦文化を(やさしく)守りたいという店主が多いよね」
『東白庵かりべ』旬の野菜天ぷら蕎麦2200円
肥「うん、蕎麦の文化や味わう楽しさを伝えるために、各店がいろいろな方向からアプローチしてる。それぞれ理想の味もスタイルも考え方も、十店十色」
本「それは蕎麦前の店も同じで、今回紹介した店はどこもつまみの多様さと楽しさに驚きました。お酒も日本酒、焼酎はもちろん、ワインも当たり前にある!」
武「とはいえ〆に蕎麦が待つと思うと変にバカ食いしないし、お酒も飲み過ぎないんですよね。つまみもちょっと上品な味が多く。居酒屋で飲むのも楽しいけど、蕎麦屋で一献は“愉しい”感じ」
本「〆の蕎麦が1人前では多いかも、という時に小もりサイズがある『蕎麦切り翁』はうれしかったなあ。常連さんが『ここは老舗なんだけど、手打ちにしたりと3代目が雰囲気よく変えてね……』と機嫌よくPRしてくださったのも印象的でした。ああ、愛されてるんだなあと。そんな蕎麦屋さんっていいですよね」
『蕎麦切り翁』秋ハモ土瓶蒸980円、金婚ぎん辛960円
武「週末、昼営業の混んでない時間に1~2合嗜んで、お酒で温まった体をさらに〆の温蕎麦で温める。外に出る頃には心も体もポカポカ上機嫌。いい感じです」
池「こっちもポッカポカ上機嫌になりまっせ。蕎麦屋の鍋!」
菜「鍋の切り口、今までの蕎麦特集でやってなかったかもね」
和「でしょ。ネットでざっと見ただけでも鍋をやってる蕎麦屋ってかなりあるのよ。でもよく調べてみると鍋は宴会仕様が多く、1〜2人前のアラカルトは少ない。やっぱり自由に好きな蕎麦前つまんで自分のタイミングで鍋も食べたいじゃん。早めに調査始めた割には後半ダブついて焦った!」
鍋のダシで作る〆蕎麦の愉しみ♪
池「で、最終的にセレクトしたのが今回の鍋。いい蕎麦屋って素材の香りや味の感度が高い。そういう店の鍋はいわゆる宴会鍋とは一線を画して旨いわけよ」
和「どこも1〜2人前で鍋を楽しめることと、蕎麦前を軽く超えたつまみ&料理が豊富に揃うのが共通点。ストイックな蕎麦屋ではなく、料理好きの店主が営む自由度の高い店に落ち着いたね」
池「素材でいうなら『umebachee!』の天然キノコの鍋は圧巻だった。鍋いっぱいのキノコはド迫力、食べ進むうちにダシがツユに加わって、それでやる〆蕎麦なんてもう……」
『umebachee!』天然きのこ6000円

全員「くう、おいしそーっ!」
池「意表を突かれたのが『十色』の蕎麦と牛もつ鍋の取り合わせ。素朴でスッキリVSパンチ&こってり、でもコントラストよし。ニンニクが効いてピリ辛となったツユでの〆蕎麦もオツなり」
肥「蕎麦は蘊蓄を語りがちだけどもっと自由に楽しむべきだねー」
武「蕎麦屋も高級路線と大衆路線と二極化しているようですが、外食産業のパワーが落ちている今、どちらも頑張ってほしいですよね。とはいえやっぱり後者を応援したい。てことで庶民の味、蕎麦の文化を楽しく味わって、ひと足早く心もお腹も福々と満たしましょう!」
文/肥田木奈々、撮影/浅沼ノア(いのも、よしみや)、西崎進也(かりべ)、小澤晶子(蕎麦切り翁)、貝塚隆(ウメバチ)
※月刊情報誌『おとなの週末』2025年12月号発売時点の情報です。

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