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グレーでいい、難しくないと広めたい!

NPO「ココロのバリアフリー計画」は、車いすユーザーだけでなく、ベビーカーでも、お年寄りも、みんなが出かけやすい社会を目指す。設立から12年が経ち、応援店は3000軒を超えている

君江『ベビーカーでどうぞ』とか『お子様歓迎』と書いてある店は、車いすで行ってもやさしいことが多い気がします。そして、やさしい店は、来ているお客さんもやさしい!」

「ファミリーファーストは当たり前です。ウチは売り上げの構成比35%がファミリーという、異例の赤提灯(笑)。今、飲食業界でも売り上げが減っているところも多いんだけど、ありがたいことにウチはファミリーが多いので今も上がってるんです。

そもそも、一号店の頃『犬も行ける居酒屋』で超有名になったんです。条例でだめな自治体もあるんだけど、僕が一人暮らしで犬を飼ってたので、仕事場に連れて行きたかったからOKにして。一号店の広告に『お子様、ワンちゃん大歓迎』って書いたの覚えてるんですよ。壁もないし、街の屋台みたいなイメージにしたかった。車いすの方も、ファミリーもワンコ連れも、みんながふらっと寄れればいいと思ってました

世田谷が『串カツ田中』の1号店である
世田谷が『串カツ田中』の1号店である

君江「この前、ある店に娘と行ったんですが、前は入って食事できたのに『やっぱりうち、車いす無理だわ』と断られました。『でも前に入ったことがあるので大丈夫です』と言ったら、『今日は無理』とピシャッとドアを閉められた。暑い日に、段差を乗り越えて、けっこう待って……。でもそれより『ピシャッ』が哀しくて。

以前の私もだけど、こんなことをされたら、人によっては引きこもっちゃう人もいると思う。でも、こういう店を嘆いたり、批判するよりも、やさしい店を応援することが大事だなと

「流行ってる店にありがちなんだけど、そういう店はあまりいい運命を歩まないんじゃないかと思う。

僕も、この前子連れの友人たちと食事をしたら、その店はベビーカーをたためと言うんです。店は空いてるから、『イスを抜いてベビーカーを入れていい?』と聞いたら『たたんでください』。『混んで来たらたたむのじゃあかんの?』と聞いたら、『ルールなんで』と。住宅街の店でそんなことしてるからガラガラなんだと思ったよ。週末土曜、僕たち以外ノーゲスト。惨劇ですよ。住宅街でファミリーファーストじゃなかったら終わるよ、と思いました」

君江「車いすの友人たちは、ホテルのレストランや大きな商業施設の中の店しか行かない人が多いんです。設備がしっかりしてるから。でも、本当はもっと街中のいろんな店に行きたいですよね。

私は『田中』に出合って、『こういうお店もあるんや』という希望が持てた。それで、車いすの友人たちと『田中会』と称して高田馬場店で月イチで飲み会をしてたんです。みんな、千葉や八王子から来て、昼から飲んで食べて、話して、『楽しかったー』と帰っていく。

『外に出る勇気につながった』と言ってくれ、実際に『飲みに行ったよー』と報告してくれました。コロナなどもあって途切れてたんですが、『田中会』は復活させたい!」

社員も車いすを体験
社員も車いすを体験

「僕も経営者だから、一席でも多くして、売上伸ばしたい気持ちはよくわかります。でも、白か黒かと言われたら避けたくなるけど、グレーでええんですよ。さっき話したベビーカーをたたませた店も、『混んでなければOK』とグレーにすればいい。長い目で見たら、絶対その方がお客さんもまた来てくれるのになあと思います。

完ぺきを目指さなくていい。きみちゃんの『データがあったら、自分で選ぶから』という言葉って、店としてもすごく気が楽になる。『ココロのバリアフリー計画』を、グレーでいいし、難易度高いことをしてるわけじゃないということとセットで広めたいんです

応援店が増え、君江さんのように車いす利用者が笑顔で飲食を楽しめる世の中になりますように
応援店が増え、君江さんのように車いす利用者が笑顔で飲食を楽しめる世の中になりますように

君江うれしいのは、友人たちが『同じ行くならやさしい店に行きたいから』と、『ココロのバリアフリー応援店』に行こうと言ってくれること。それで、『ここならお祖母ちゃんとも行ける』『親が来た時行けるなあ』となるんですね。

お店側が、一席でも多くしたい気持ちもわかります。でも、大掛かりな設備を、と言うのではなくて。できることの中で歩み寄れば、お互いが気持ちよくなれるんじゃないかと思います。そして、一軒の店がその人の人生を変えるって、本当にあるんです! 私がそうでしたから。そのことを伝えていきたいと思います」

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【コラム】もっと広めたい!シェアスロープ
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本郷明美
本郷明美

本郷明美

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