なぜ売れなかったのか?
アヴァンシアのデビュー時の価格は2.3Lモデルが223万5000~249万5000円、3L V6モデルが269万5000~295万5000円と安い!! つまり、3L V6+5ATの上級ワゴンが270万円前後というのは今の感覚からすると驚くほど安い。
しかも安全装備や快適装備も相当に充実。だから「高すぎたから売れなかった」という話ではない。むしろ、「価格以上に中身を詰め込んだのに、それが市場に伝わらなかった」と見るべきだろう。
アヴァンシアそのものが悪かったというより、「何のクルマなのかがわかりにくかった」。
この問題が大きかったと考えられる。前述のとおり当時の市場には、アコードワゴン、オデッセイ、ステップワゴン、セダン系上級車などが存在。200万円台のホンダ車としてアコードワゴンやオデッセイと競合し、アヴァンシアの「分かりにくさ」が販売面で不利だったと思われる。
つまり、「あれもこれも欲張って全部入りにした結果、何が一番得意なクルマなのかわからなくなった」というのが売れなかった最大の理由だろう。
ユーザーが混乱
アヴァンシアは1999年9月発売を開始して2003年に生産終了。販売期間は約4年間で、一代限りで消滅してしまった。累計販売台数は2万4000台に届かなかった。デビュー時の月販目標が3000台だったことを考えると、かなり厳しい結果となってしまった。
2003年2月には特別仕様車「プライベートスタイル」を設定。ベース車より20万円値下げするなど、「ホンダは最後まで何とか売ろうとしていた」。
アヴァンシアは4人用上級ミニバン、3L、V6エンジンの余裕と高級感という点でユーザーから評価が高かった。アヴァンシアはつまり、市場では負けたが、乗った人には刺さったというタイプのクルマと言っていいだろう。
現在なら、SUV+高級+広い後席+ワゴン的な使い勝手という組み合わせは珍しくはないが、1999年の日本では、「高級車=セダン」というイメージがまだ強く、それを初代ハリアーが打破しようとしていた時期。
商品が悪かったというより、カテゴリーそのものが市場に存在せずユーザーが混乱してしまったのが厳しかったのだろう。
【ホンダアヴァンシアV(FF)主要諸元】
全長:4700mm
全幅:1790mm
全高:1500mm
ホイールベース:2765mm
車両重量:1600kg
エンジン:2997cc、V型6気筒SOHC
最高出力:215ps/5800rpm
最大トルク:27.5kgm/5000rpm
価格:269万5000円
※1999年9月発表時のスペック
市原信幸
1966年、広島県生まれのかに座。この世代の例にもれず小学生の時に池沢早人師(旧ペンネームは池沢さとし)先生の漫画『サーキットの狼』(『週刊少年ジャンプ』に1975~1979年連載)に端を発するスーパーカーブームを経験。ブームが去った後もクルマ濃度は薄まるどころか増すばかり。大学入学時に上京し、新卒で三推社(現講談社ビーシー)に入社。以後、30年近く『ベストカー』の編集に携わる。
写真/HONDA、ベストカー




















