最後は老舗の味にほれぼれ
どて焼き三連発。最後は、名古屋のどて焼きの老舗『島正(しましょう、名古屋市中区)』です。観光客にも人気と聞き、一人でも予約できるか電話してみました。残念ながら、カウンター席の予約は受け付けていないとのこと。ただ、電話口の対応がなんとも気持ちよく、それだけで名店の予感がします。
『八幡屋』からゆっくり歩くこと約30分。腹ごなしにはちょうどいい距離です。行列を覚悟して、お店へ向かいました。幸い行列はなく、のれんをくぐると、ラッキーにもカウンター席が少し空いているではありませんか。しかも店員さんから「電話いただいた方ですか?」とひと言。さりげないおもてなしに、さすが名古屋と感動しました。
そして、料理がどれもおいしくて安い。まずは惣菜メニューから「ほうれん草のおひたし」と「つけもの盛合わせ」をセレクト。どて焼きをすでに2軒で食べてきたお腹にも優しいし、何よりうまい!
続いて、「どて焼き」の「牛すじ」と「豆腐」をオーダー。どて焼きは、意外にも小鉢で出てきました。
ここで、「どて焼き」について少し説明を加えます。まず名前の由来ですが、鉄鍋のふちに味噌を土手のように盛り、その中央で具材を焼き、溶け出した味噌で煮込んだことから「どて焼き」と呼ばれるようになった、とされています。呼び方も「どて焼き」だったり「どて煮」だったりとさまざま。提供スタイルも、串に刺したものから小鉢で出てくるものまでいろいろです。言わば、呼び名も姿もいわば変幻自在の「どて焼き/どて煮」。基本的には、牛すじや豚モツなどを味噌で煮込んだもの、とご理解いただければよろしいかと。
説明をしている間に、どて焼きが冷めてしまいます。本題に戻り、一味をたっぷりかけて、いただきましょう。『のんき屋』とも『八幡屋』ともまた違う、モツの食感と味噌の味わい。ほんとおいしいです。
老舗のどて焼きにほれぼれしているうちに、すっかり気分も高揚。焼き物から「ししゃも」と「心臓(鳥)串塩焼き」を追加注文しました。さらに「白ご飯」までお願いして、久しぶりの定食モードに突入です。
お酒を飲みながら白ご飯を食べるなんて、めったにありませんが、そんな気持ちになるのも、名店の名店たる所以なのでしょう。
こうして無事、3軒の取材を終え、最終の新幹線に飛び乗りました。今日のお店を、ビールを飲みながら(笑)振り返ります。『のんき屋』の漬物とどてやきのマリアージュ、『八幡屋』の褐色のどて焼き、思わず白ご飯まで頼んでしまった『島正』のどて焼き。どれも印象深く、しかも自信をもっておすすめできるお店ばかりでした。
どて焼きは名古屋発祥ではないかもしれません。それでも、名古屋で独自の進化を遂げたどて焼きには、この地ならではの魅力があります。そんな奥深いどて焼きの世界を求めて、次回は発祥の地・大阪をはじめ、各地の名店を巡ります。
文・写真/十朱伸吾
おとなの週末Web専属ライター。全国のご当地グルメを求めて40年余。2013年には、“47都道府県食べ歩き”を達成した。訪れた飲食店は1万軒をゆうに超える。旅と食とお酒をこよなく愛するオプチミスト。特にビールには一家言あり。競馬と写真とゴルフも趣味。週1の自転車ツーリングとサウナでダイエットにも成功した。好きな言葉は「人間万事塞翁が馬」。











