『豆たぬき』の、お米の一粒一粒にうなぎの味と香りを凝縮させた「うなぎの炊き込みご飯」
うなぎ料理、と聞いて何を想像するだろうか?
うな丼やうな重?
それとも、ひつまぶし?
名古屋臨海高速鉄道あおなみ線小本駅の近くにある和食店『豆たぬき』。
冬はふぐが、夏はうなぎがリーズナブルに楽しめる穴場店である。
「うな丼」は1980円~、「ひつまぶし」は2280円~と、まるでひと昔前の値段。
毎年のように値上げが続くなかで、なぜ、そこまで安くできるのか。
「うなぎは丼や重箱に丸ごと1本がちょうどのるくらいのサイズが人気なんです。
私が仕入れているのは、それよりも大きい、いわば規格外のうなぎ。
市場ではあまり売れないから、割安で仕入れることができるんです」と、店主の鈴木貴志さん。
大ぶりなうなぎは、身も皮もかたくて、脂が多くてしつこいというネガティブなイメージがある。
しかし、鈴木さんはこれまで培った和食の技術で大サイズのうなぎの弱点をカバーしている。
「まず、うなぎをさばいたら、一晩寝かせます。
翌日、白焼きにするのですが、たれを塗って焼き上げる前にアルミホイルに包んで約30分蒸すんです。
すると、余分な脂が落ちて、身もやわらかくなるんです」
これは「ひつまぶし(特上)」(3900円)。
実際に食べてみると、身はやわらかくて皮はパリッとしている。
肉厚なので、しっかりとうなぎを食べた気分になる。
それにしても……「関東風うなぎ」のように蒸しているとは思えない。
「蒸し器で蒸しているわけではありませんから。
アルミホイルに包んで30分、というのがポイントなんです。
いわば、関東風と関西風のハイブリッドですね」(鈴木さん)
さて、今回はここからが本題。
『豆たぬき』では、うな丼やひつまぶし以外にもう一つの食べ方を提案している。
それが「うなぎの炊き込みご飯」(2700円)だ。
なにはともあれ、まずは食べてみよう。
うわぁっ!
土鍋の蓋を開けると、食欲をそそられる香りが、湯気とともに立ち上る。
しゃもじで茶碗によそってひと口……。
うっ、旨いっ!
お米の一粒一粒にだしがしっかりと染み込んでいる!
この奥行きのある味わいは、今まで食べた炊き込みご飯のなかでも、間違いなくトップクラスの美味しさだ。
「軽く炙ったうなぎの骨とともにご飯を炊きました。
炊き上がったら、細かく刻んだうなぎの蒲焼きをのせて土鍋の蓋を閉じます。
すると、ご飯全体にうなぎの味と香りがくまなく行き渡るんです」(鈴木さん)
うなぎの炊き込みご飯は、もともと懐石コース(5400円~)の〆で出されていたもの。
これが、常連客からの要望でメニューに採り入れられたという。
お茶漬け用のだしと薬味、漬物が付くので、ひつまぶしと同様に味の変化が楽しめる。
豆たぬき
[住所]愛知県名古屋市中川区松葉町4-30-1
[TEL]052-352-8825
[営業時間]11時半~14時、18時~21時(22時L.O.)※夜は予約制
[定休日]水曜
永谷正樹(ながや・まさき)
1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。
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