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横浜といえば、焼売。多くの店で食べられます。崎陽軒をはじめ、お土産としても名高いです。そんなハマの焼売がいつから愛されてきたのか。そのルーツをもとめて“シウマイ”の店を巡りました。

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昔ながらの味とルーツを求めていざ!

シウマイ。シューマイでも焼売でもなくシウマイ、の文字を目にするとちょっとウズッとする。なんか郷愁を誘われ、無性に食べたくなるから不思議だ。

で、そのとき頭に思い浮かぶのはヨコハマのシウマイ。異国情緒溢れるかの地がそのルーツ、って話は聞いたことがあるが、詳しくは知らん。そーだ、横浜へ行こう! 昔ながらのクラシックな味を求めつつ、その物語を辿ろうやないか。折箱にギュッと詰まったお土産シウマイを想像しながら、すでにひとりにんまりするのであった。

で、最初に向かったのは、中華街の『清風楼』だ。池波正太郎が著書『むかしの味』の中で、「亡師が『むかしの味がするね』といった清風楼の焼売は、私の大好物だ」と書いてるやつだ。

開店は昭和20年の12月。店内の額に“シウマイひとすじ”とある先代・陳 治安さんのレシピは一切変えてないという。

店内は昔ながらの中華街の趣を感じさせ、落ち着いた空間。
店頭に並んで順番を待つ、変わらぬ味と雰囲気を求めて足を運ぶオールドファンも多い

早速、店内にて注文。登場したそれは、少し飴色がかって小ぶりなサイズにぎゅっと具が詰まっている。聞けば、使われているのは豚肉と貝柱と長ネギのみ、昔ながらの無添加だ

ひとつ口に運ぶと、弾力抜群の歯を跳ね返すような食感から、旨みが飛び出してくる。豚肉と干貝柱の旨みがぎっしりのリッチな味。そうこうする間も店頭購入の客は後を絶たず、こちらも20ケ2800円、忘れず土産を購入したことは言うまでもない。

お土産は12個入り1720円から

レトロに酔い 幻のシウマイも求む

さて次に訪ねたのは、山手は麦田町の『奇珍』だ。大きな赤いフードと黄色いカーテンがなんともレトロでぐっとくる。開店は大正6年。実は横浜で最も古いといわれる町中華であり、そしてやはり、昔から変わらぬレシピのシウマイがあるのだ。

 

毎日手作りするシウマイは肉感が満載でやさしく甘い味

店は3代目となる黄 国栄さん(73)とお姉さんの秀晃さん(85)が自ら鍋を振ってその味を守っている。幸いにもおふたりに話を聞くことができた。

「父が言っていたのは、ともかくいい材料を使えということね。それからひと口かふた口で食べられるのがちょうどいいと」

 

『奇珍』の味を変わらず守るおふたり。

中身は豚肉と玉ネギのみ。何より肉はいいところを指定して、脂身をほどよく足して……とこだわりあり。毎日500個くらい手作りされている。

余計な味は入れないというシウマイは、ぎゅっと程よいサイズで皮はふんわし、噛むとほんわり甘みがあるのも特徴。うんま~。思わず顔がほころぶような味。秀晃さんが「お醤油と辛子をつけると丁度いいのよ」とひと言。うんうんうん!

お土産のシウマイは出来上がるのが14時近く。
目指していく場合は確認を。
中身はシンプルなのに旨いよなあという味

すっかり満足した足で、次なる目的地へ。寡聞にして知らなかったのだが、かつて伊勢佐木町にあった『博雅亭』が日本で初めてシウマイを出した店と言われているらしい。で、その伝統を受け継ぐ『博雅のシウマイ』が今もあるというではないか!

作っているのは神大寺にある工場だ。現社長・彭 慧華さんから聞いた資料によれば、『博雅亭』が伊勢佐木町に進出したのは明治32年。そこでの店頭販売が日本における製造販売の最初という。大正11年には2代目が北海道産の乾燥貝柱と車エビを加えた海鮮シウマイを完成。横浜のシウマイといえば『博雅亭』というほど評判になったそう。

しかし、本家は後継者不在で昭和55年に閉店。親戚筋の姉妹店『博雅茶郷』が横浜タカシマヤに出店して親しまれていたが、平成21年に退店。残念ながら販売店は姿を消したのだった。

現在の『博雅のシウマイ』はその工場を受け継ぎ独立したもので、志とレシピを引き継いだ彭さんらによって、原点の手作りに戻って作られている。

 

『博雅』の社長、彭慧華(ポンフェファ)さん

変わらぬ特徴は、大きくごろっとした肉感。国産食材、無添加。材料を贅沢に使ったそれは、きれいな旨みで食べ応え充分だ。海鮮シウマイも復活。ハマっ子が絶賛したという元祖の味、やはり見事なり!

 

特製肉シウマイ ネット880円(税別)、海鮮シウマイ 同1280円、国産海老シウマイ 同1280円(いずれも6個入り)

清風楼(山下町)

美食家で知られた作家・池波正太郎が愛した店だったのは上記の通り。

昔からの味を守っているのは、シウマイだけでなく酢豚やかに玉もそうで、贅沢で旨い。シウマイの豚肉はロースや肩ロースなど各部位を合わせ、干貝柱からの旨みもしっかり。その美味しさは戦後の復興の中で、港湾関係の人づてに自然と広まり人気となったという。

シウマイは店頭販売にて営業中通しで買えるが、売り切れもあるので前もって予約をすれば確実だ。食事は予約不可なので注意。お土産は12個入り1720円から。

 

[住所]神奈川県横浜市中山区山下町190
[電話]045-681-2901
[営業時間]11時45分~14時半(14時LO)、17時~20時半(20時LO)、日・祝12時~19時半(19時LO)
[休日]木(祝日の場合は営業、前日か翌日が休み)※要確認
[交通]みなとみらい線元町・中華街駅3番出口から徒歩5分

 

奇珍(麦田町)

現店主の祖父、黄 遠光さんが広東省から来日し、大正6年に本牧に開店。戦後現在の場所に移って、家族経営で伝統の味を守っている。

やや色あせたピンクのクロスがかかったテーブルが並ぶ店内の佇まいがまたよし。何日もかけて戻された自家製メンマがのる竹ノ子そばやチャーハンも人気。

この店独特の味の特徴は、ほんわり甘みがあること。その味を求めて家族4代で通うお客さんもいる。肉と玉ネギだけという素材を突き詰めたシウマイもやさしく甘い。お土産は15個(3人前)1680円。

 

何日もかけて戻す前の乾燥メンマ

 

[住所]神奈川県横浜市中区麦田町2-44
[電話番号]045-641-4994
[営業時間]11時半~15時、17時~21時
[休日]木(祝日の場合は営業、前日か翌日が休み)※要確認
[交通]JR根岸線山手駅から徒歩10分

 

博雅のシウマイ(神大寺)

伊勢佐木町にかつてあったシウマイ発祥の店と言われる『博雅亭』。その流れを汲んだ横浜タカシマヤの『ヨコハマ博雅』はもうないが、その工場とレシピを引き継いで独立した。

国産もち豚の肉の美味しさを生かし、無添加で味付けはシンプル。大きなサイズで歯応えのある食感は昔ながらだ。小麦粉やエビなどの食材も国産。贅沢だけどやさしい味を引き出している。販売は工場直売とネットのみ。

 

平成23年(2011)に独立。博雅亭の味を受け継いでいる。横浜タカシマヤ時代の機械生産から手作りに戻し、適正な規模で誠実に作っている

 

[住所]神奈川県横浜市神奈川区神大寺2-36-6
[電話番号]045-620-2531
[営業時間]11時〜17時、土・祝〜16時 ※工場内直売店舗のみ、イートインなし
[休日]日
[交通]横浜市営地下鉄片倉駅から徒歩10分

 

撮影/鵜澤昭彦 取材/池田一郎 ※店のデータは、2020年12月号発売時点の情報です。

 

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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おとなの週末Web編集部
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