カキが旨い季節がやってきた。衣はカリッと身はジューシーなカキフライ、セリがたっぷり入ったカキ鍋、炊きたてのカキご飯。茹でたカキに甘味噌をつけて焼くカキ田楽もオツだ。カキ漁師は、海で採れたてのカキの殻からナイフで身を剝いて、海で洗ってそのまま生で食べるのが好みだという。レモンをちょいと絞ればなおさらよい。うーん、旨い!
そんなカキ漁師の旅の本が出版された。『カキじいさん、世界へ行く!』には、三陸の気仙沼湾のカキ養殖業・畠山重篤さんの海外遍歴が記されている。畠山さんは「カキ養殖には、海にそそぐ川の上流の森が豊かであることが必須」と、山に植林する活動への取り組みでも知られている。
「カキをもっと知りたい!」と願う畠山さんは不思議な縁に引き寄せられるように海外へ出かけていく。フランス、スペイン、アメリカ、中国、オーストラリア、ロシア……。世界中の国々がこんなにもカキに魅せられていることに驚く。そして、それぞれの国のカキの食べ方も垂涎だ。これからあなたをカキの世界へ誘おう。
連載17回「あの味が忘れられない…三陸の漁師“カキじいさん”が語る、じつは「カキの旨み」が産地で決まるワケ【カキじいさん、世界へ行く!】」にひきつづき、今回は、東日本大震災のカキ復興の手助けをしてくれたルイ・ヴィトン家を訪ねる旅である。どんな胸躍る出会いがあるのだろうか。
東日本大震災の大津波襲来
2011年(平成23年)3月11日。三陸リアスの海は静かな朝をむかえていました。
北国に春をつげるマンサクの花が咲きはじめ、海ではワカメの収穫が始まっていました。カキやホタテ貝も大きく育っていました。朝から水揚げや、出荷作業で大いそがしでした。
お昼すぎ、一段落したので、カキのいけすの上にある私の書斎小屋で、しめきりが近くなっていた原稿を書いていたのです。2時半過ぎ、小さな地震を感じました。5年ほど前から地震を感じることが多かったのです。
そのたびに、集落ごとに取り付けてあるスピーカーから「ただいま地震がありました。津波の心配はありません」と繰り返されることが多く、この日も「またか」と思った人が多かったと思います。でも、ゆれが大きくなり、棚の上の本がどんどん落ちてきます。サイレンが鳴り、スピーカーから「三陸地方に大津波警報が発令されました。すぐ避難してください」と放送されたのです。
三陸リアス海岸は、昔から津波に襲われる地として知られています。津波は台風などの波とちがい、水面から海底までの海水が全部動いてきます。波は、島などがあれば、くだけてしまいますが、津波は川のように海水全体が動いてきますから、どんなに入り組んだ地形でも湾の奥までやってくるのです。
さらに、湾の奥は水深が浅くなりますから、どこまでも海水が盛り上がるのです。
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