おかげさまで『おとなの週末』は創刊から25年を迎えました。そこで、創刊した2001年以降にオープンしたお店から本誌スタッフが「未来に遺したいひと皿」をセレクト。編集・ライターそれぞれが、思い思いの料理を挙げました。今回は、編集・門脇 宏編。日頃ご愛読いただいているみなさま、そして本誌が歩んできた25年の間に生まれたお店に感謝を込めてお届けします。
編集・門脇 宏
職業柄「好きな食べ物は?」と聞かれることが多い。そのときの気分によって答えは変わってくるわけで、春に聞かれれば「ホワイトアスパラ」。初夏なら「鮎」とか。とはいえ通年でいえば味噌汁を含めて「スープ」全般となる。最後の晩餐は汁、スープが良いなぁ。
海の旨みが折り重なった心揺さぶる官能的な香り『ビストロシンバ』@銀座「シンバ特製 ブイヤベース」
人間の五感のうち、もっとも記憶にアクセスしやすいのは嗅覚といわれる。ある種の香りを嗅ぐと古い記憶が呼び起こされる、そんな経験をした方も少なくないだろう。
だからこそ精妙な香りを放つ料理に出合うと脳の芯がしびれるような、揺さぶられるような感動を覚えるのではないか。
オーナーシェフの菊地佑自さん率いる『ビストロシンバ』は、食材の組み合わせ、熱の入れ方、ハーブやスパイスの使い方を含め、とことん“香り”にこだわるレストランだ。
冬に登場する、上質な穴子とカルダモンの香りが炸裂するひと皿、春に登場するヤリイカとホワイトアスパラ、カルダモンのひと皿……何度ここでノックアウトされたことだろう。
そんなシンバで通年提供している料理が「シンバ特製 ブイヤベース」。
フランス修業時代に出合った、スープ・ド・ポワソンとエビのビスクの幸福な融合こそ、シンバのブイヤベースの原点だ。
シンバ特製 ブイヤベース お一人様 2600円

オマールや甘エビの濃厚な旨みをたっぷり湛えた黄金色のスープは、まさに海のごちそう。通常、ブイヤベースで使われるサフランやペルノー(アニス主体のハーブリキュール)は加えず、魚介の旨みだけでピュアに仕上げられている。
その芳醇にして豊満な香りは、思い出すだけでワインが飲みたくなるような、罪なひと皿なのだ。
時々東京を離れると、未来に遺したい味が多いことに気づかされる。
たとえば京都の『ル キャトーズィエム』。最高の肉質の牛肉を軽やかなステーキで提供してくれる。清らかな肉の旨みと香り、余韻の軽さ。いつまでも食べ続けたくなる不思議なステーキだ。
熊本の『キジヤ』。九州の食材を鉄板焼という調理法で提供してくれる一軒だ。ここでいただいた天草のタコのステーキは、自分史上最高のタコ料理のひとつといってもいい。
噛めば噛むほどあふれる海の旨みをワインとともに味わう幸せ。そして〆にお好み焼き。こんな贅沢、未来に遺したいに決まっている。
ほかに神戸や博多、中標津や鎌倉にもあるけれど文字数が尽きたので、また次回。
『ビストロシンバ』店主:菊地佑自さん
[店名]『ビストロシンバ』
[住所]東京都中央区銀座1-27-8
[電話]03-6264-4218
[営業時間]17時半~24時(23時LO)、日15時~21時最終入店
[休日]月・不定休あり
[交通]地下鉄有楽町線新富町駅2番出口から徒歩5分
『Le 14e(ル キャトーズィエム)』@京都
[店名]『Le 14e(ル キャトーズィエム)』
[住所]京都府京都市上京区伊勢屋町393-3 ボガンビル2階
[電話]075-231-7009
[営業時間]月・火・木・金18時~21時LO、土・祝17時~21時LO
[休日]水・日 ※現金払いのみ
[交通]京阪電鉄神宮丸太町駅から徒歩5分
『KIJIYA(キジヤ)』@熊本
[店名]『KIJIYA(キジヤ)』
[住所]熊本県熊本市中央区南坪井町7-17
[電話]096-352-6222
[営業時間]17時~23時(22時LO)
[休日]日
[交通]熊本市電藤崎宮前駅から徒歩1分
撮影/貝塚 隆(ビストロシンバ)、取材/門脇 宏
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※画像ギャラリーでは、京都・熊本の、未来に遺したい「あの店のひと皿」の画像をご覧いただけます。
※月刊情報誌『おとなの週末』2026年8月号発売時点の情報です。

■おとなの週末2026年9月号は「ぶっかけと冷やかけ」





