いろんな顔で
ほのぼの懐かしくシアワセなり!
うららかに天気のいい冬の朝、吾輩は〝純喫茶さんぽ〟に出かけるのである。ちなみにいつにも増して朝から動くのは、純喫茶は朝が早いから。お気に入りの席に陣取って「モーニング」を頼み、スポーツ新聞をめくるおじさんにも出会えるはずだ。「純喫茶」なる言葉に馴染みがない人のために、物の本から定義を引くと、大正から昭和初期にかけて広まった喫茶店の中で、「女性がアルコールを給仕する業態の店」が「特殊喫茶」と呼ばれたそうで、対して、純粋にコーヒーや紅茶などを提供するのが「純喫茶」。昭和な雰囲気もいい。ほかにも〝らしさ〟を語れば多々あるが、それは追ってさんぽで楽しもう。
アメ横の雑踏から、地下に広がるレトロな別世界。『喫茶丘』
まずは上野はアメ横の『喫茶丘』へ。
アメ横の雑踏から階下に降りると、地下1〜2階に広がる空間はレトロな別世界。1964年の創業、そのまんま昭和のエアポケットに入ったような感覚で、純喫茶時間を楽しめる。ソースのブレンドに秘密ありのハヤシライスや、中太麺でオレンジ色のナポリタンも懐かしの味。チョコレートパフェも見逃せない。ソファ席でのんびりと。
地下1〜2階に広がる130席の大箱。そのレトロゴージャスとも言うべき内装を楽しみたい。どデカいシャンデリア、カットの入った鏡やステンドグラス。いいねえ。昔は〝舶来品〟という言葉があったけど、その憧れが生んだ空間だ。入り口にあったゴルゴ13を読み耽りながらひと息。
創業52年。アットホームな純喫茶。『喫茶ニット』
お次は錦糸町に移動して『喫茶ニット』へ。
創業52年。親子三代に40年選手のベテランスタッフが切り盛りするアットホームな純喫茶。ワインカラーのソファのボックス席も落ち着くし、壁にはさりげなく本物の押し葉が閉じ込められたタイルがあったり、年代物のお洒落なランプも魅力的。20分かけて焼く大人気のホットケーキは分厚い2段重ねで、中までふわっと焼けている。ミルクセーキやオムレツ、かにぞうすいなど懐かしいメニューも豊富。
何がいいって、82歳で今もテキパキと元気なママ、小澤民枝さんの笑顔に、娘さん、お孫さん、さらにはキッチンのお二人も勤続30年以上と、昔変わらぬ雰囲気でなんともアットホーム。メニューの懐かしさもさることながら、家族な感じも純喫茶の魅力だ。
先々代の頃は旅館で、屋号をそのままに、純喫茶として開店。『喫茶ゆうらく』
浅草橋で行きたいのは『喫茶ゆうらく』。朝7時と開店は早いが、開店前に並ぶ常連さんも。
こちらの店は先々代の頃は旅館で、屋号をそのままに1974年、純喫茶として開店。レギュラーメニューはもとより、朝一番のモーニングメニュー、ランチサービスなど、ともかくメニュー豊富でリーズナブル。あとから拡張したという右手の部屋はやや隠れ家めいて、実に腰が落ち着く。人気のひとつフレンチトーストは卵がたっぷり使われ、焼き加減も絶妙。現店主のお父さんが淹れるブレンドコーヒーとの相性もバッチリだ。
隠れ家めいたロケーションと布張りのソファがやけに落ち着く。「選べる楽しさを」と店主の宮
城恒宏さんが言うように、ともかくメニューが多い。レストランとも洋食とも違う、喫茶店飯の楽しさを満喫できる一軒だ。
一度幕を閉じた、創業の先代の店を、改めて引き継いだ。『はまの屋パーラー』
有楽町の『はまの屋パーラー』では迷わずフルーツサンドである。食べやすい大きさにカットされて見た目も麗しく、これぞ純喫茶の美徳を湛えた姿形は、先代から受け継がれたもの。好みでハーフ&ハーフもOKだ。
惜しまれつつ一度幕を閉じた、1 9 6 6 年創業の先代の店を、2012年に改めて引き継いだ。場所や店内の家具はもとより、人気のサンドゥイッチのレシピも先代から丁寧に教わったものだ。フルーツ・サンドゥイッチには、ミカン、黄桃、パイナップル、リンゴ、バナナとフルーツ満載。生クリームに隠し味のマヨネーズが利いている。
口元の生クリームに別れを惜しみつつもほのぼの。
純喫茶さんぽ、尽きることなく幸せなり!
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