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愛知県のラーメンやつけ麺を語ろうとするとき、どうしても名古屋市内の店ばかりがクローズアップされるが、地方にも絶対の自信を持って勧められる店がある。 名古屋めしには欠かせない八丁味噌の産地として知られる岡崎市にある『つけめん舎 一輝 本店』もその一つだ。

唯一無二の濃厚つけ麺。愛知・岡崎『つけめん舎 一輝』の「つけめん元味」

愛知県のラーメンやつけ麺を語ろうとするとき、どうしても名古屋市内の店ばかりがクローズアップされる。 県庁所在地ゆえに仕方がないことかもしれないが、地方にも絶対の自信を持って勧められる店がある。

名古屋めしには欠かせない八丁味噌の産地として知られる岡崎市にある『つけめん舎 一輝 本店』もその一つ。 店は、2008年に店主の杉浦正崇さんが開店させた。 杉浦さんは弟さんとともに安城市で祖父の代から続く『北京本店』を継ぎ、厨房で腕を振るっていた。

「当時、東京や九州のラーメンを食べ歩いていたんです。 当時は濃厚つけ麺がブームで、初めて食べたときに衝撃を受けたんです。 で、どうしても作りたい!と思いました」と杉浦さん。 その気持ちは日増しに大きくなっていった。

ところが、スープを作ろうにも、水に対する材料の量も種類も、ラーメンとは勝手が違っていた。 濃厚だからといって、動物系だけだとしつこくなるし、魚介を多めに入れてもバランスが崩れるという有り様だった。

「鶏と豚の動物系と、カツオと煮干し、サバ、ムロ、昆布、椎茸の魚介系、そして玉ネギと人参、ニンニクの野菜をバランス良く配合して味を中和させるんです。 まずは、1日目に10時間。 2日目は8時間の、計18時間煮込みます。 しかも、材料がたっぷりと入るので、撹拌しなければ焦げついてしまうんです。 もう、ほとんどシチューのようなスープに仕上がっています」(杉浦さん) スープのベースとなる肉と魚介、野菜にマッチするだけでなく、それぞれの旨みを引き出すべく、タレに使っているのは千葉県産の醤油。 さらに、濃厚なスープに負けないような麺を作るために、製麺業者とともに東京のつけ麺店を巡ってはヒントに繋がるものを探した。

「うどんに近い、もっちりとした食感をめざしました。 なおかつ、小麦そのものの味が濃厚で粘りがある麺ですね。 ヘタをすると、スープ作りよりも大変だったかもしれません。 なにしろ、粉を探すだけで2年はかかりましたから。 利益云々よりも、作りたいという気持ちが先でしたから、スープもタレも麺もかなりコストがかかっています」(杉浦さん)

こうして完成したのが、「つけめん元味」(800円)。 さて、肝心な味だが、動物系と魚介系、野菜、それぞれの旨みが一体になっている。 たしかに濃厚ではあるが、麺がしっかりと受け止めているのでしつこさはない。 驚いたのは、誕生から10年以上も経っているのに、古さをまったく感じなかったことだ。 メニュー名にもあるように、「元味」、つまり、店にあるすべてメニューの原点だからだろう。 そこに、流行とかは必要ないのだ。

この一杯を引っ提げて、杉浦さんは中華料理の道を弟さんに托して、ラーメン・つけ麺の道を歩み始めた。 現在はここ『つけめん舎 一輝 本店』のほか、刈谷市と台湾・台北にラーメンとまぜそば、そして、『北京本店』の名物、北京飯が楽しめる『半熟堂』を、安城市に持ち帰りの唐揚げ専門店『いっき商店』を営んでいる。 「つけめん元味」は、杉浦さんにとっても原点の味なのだ。

つけめん舎 一輝 [住所]愛知県岡崎市法性寺町字荒子54-2 [TEL]0564-55-0112 [営業時間]11:30~14:00(土・日・祝は~15:00)、18:00~22:30(22:00L.O.) [定休日]月曜

永谷正樹(ながや・まさき) 1969年生まれのアラフィフライター兼カメラマン。名古屋めしをこよなく愛し、『おとなの週末』をはじめとする全国誌に発信。名古屋めしの専門家としてテレビ出演や講演会もこなす。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

この記事のライター

永谷正樹
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