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「招き猫発祥の地」に猫が寝ていた!

都バス「東42-1」系統「蔵前一丁目-花川戸」間
縁結びの御利益で有名な今戸神社=東京都台東区

さて、浅草はあまりに有名だから今回はスルーして、「花川戸」のバス停で下車。今戸(いまど)神社までぶらぶら歩いてみた。こっちも古い町ですもんね。きっといいお店が見つかることでしょう。

神社に来てみたら、平日にも関わらず女性の参拝客がたくさんいた。何でこんなに来てるんだろうと思ったら、「縁結びのパワースポット」とされているんですね。納得。豪徳寺(東京都世田谷区)が有名だけど、ここも「招き猫発祥の地」とされていて、縁起物のお土産が売られてた

私はこの歳だから今更、「縁結び」でもないけど女性客に混じってお参り。ふと見ると拝殿では本物の猫が、我が物顔で寝ていた。やっぱりここ、猫に所縁のあるとこなんですねぇ

本物の猫がスヤスヤとお昼寝

近くには、待乳山聖天(まつちやましょうでん)もある。『鬼平犯科帳』で有名な池波正太郎先生が生まれたのは、この寺院に近接する待乳山聖天公園の南側。浅草裏のこんなところで幼少時を過ごしたからこそ先生、あんな粋な時代小説をいくつも物することができたんでしょうなぁ。これにも、納得。

ただ、やっぱりこっちでも「これは」というお店が見つからず。仕方がないですね。さっき決めた通り、浅草橋に戻りましょう。

蝶ネクタイの店主がお出迎え ラーメンの深い味わいに感服

水新菜館=東京都台東区

来たルートをバスで引き返し、「浅草橋駅前」で下車。さっき見つけた店が、これです。
「水新菜館」。料理店に「水」なんて屋号をつけるのは珍しいですよね。それにしてもこの店構え、どうです。絶対「美味いよ」と言ってるみたいじゃないですか

そろそろ午後2時近かったのに店内はまだまだ混んでいた。ますます期待が高まる。

入店する時、店主(しかも蝶ネクタイを締めてる!)が手をアルコール消毒してくれたんだけど、「はい、お手を拝借〜」だって。これだけで楽しくなってしまう。

張り出されたメニューに多彩な料理が書かれていたが、まぁ最初だしオーソドックスに「ラーメン」(税抜き600円)と「ギョーザ」(同520円)を注文。そしたら出て来たのが、これですよ〜!

もう見ただけで、美味い、って分かるじゃぁないですか。

水新菜館の「ラーメン」と「ギョーザ」

実際、スープをひと啜りしたらすごくあっさりな中に、深い味わいが舌に残る。これは、タダモノではない。

中細の縮れ麺はモチモチの食感で、あっさりスープに合う、合う。肉厚のチャーシューは表面の焼き目が香る。食材の全てがそれぞれの味を醸し出しながら、互いに主張し過ぎて相殺することなく、逆に溶け合って一つの完成品を作り上げている。こんだけ本格的な昔ながらのラーメン、今時なかなか味わえるものじゃないですよ。言うなれば「居心地のいい味」って奴。戻って来て大正解! でした。

スープを全部、飲み干して完食。餃子もあっという間に平らげました。きっとこういう店、池波先生も大好きだったろうなぁ、と勝手に想像も膨らむ。ご馳走様〜

帰り掛けに店の人に聞くと、スープのダシは鶏ガラ中心に、豚と煮干しもちょっと加えている、とのこと。だからあんなに深い味わいになっていたんだなぁ。

店の名前についても教えてくれました。何と「すいしんさいかん」じゃなくて「みずしん」と読むんだって。元々は水菓子(果物)屋をやっていて、店主が「新次郎」さんだったからこの屋号となったらしい

ただ、ラーメンも出すようになってからもう、50年以上。町にすっかり定着したお店なんですね。2時を過ぎてもお客がどんどん入って行くのも道理、でした。

いやぁ、初っ端からムチャクチャいい店に巡り会ってしまった。幸運に感謝、です。

ただし気になったのが、来る客来る客「あんかけ焼きそば」を注文していたこと。美味いんだよ、絶対。みんな、分かってるんだよ。ここの名物なんだよ!

だからもう、決めました。緊急事態宣言が解除されたら今度は夜にここに来て、「あんかけ焼きそば」をつまみにビールと洒落込もうっと。最高な筈だよ、絶対。

「水新菜館」の店舗情報

[住所] 東京都台東区浅草橋2-1-1
[電話]03-3861-0577
[営業時間]11時半~15時(LO)、17時半~20時45分(LO)
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で現在は20時(LO)まで。営業時間や定休日は異なる場合があります。
[休日]日曜、第2・4土曜
[交通] 地下鉄都営浅草線浅草橋駅A4出口から徒歩約1分、JR総武線浅草橋東口から徒歩約3分

西村健

にしむら・けん。1965年、福岡県福岡市生まれ。6歳から同県大牟田市で育つ。東京大学工学部卒。労働省(現・厚生労働省)に勤務後、フリーライターに。96年に『ビンゴ』で作家デビュー。2021年で作家生活25周年を迎えた。05年『劫火』、10年『残火』で日本冒険小説協会大賞。11年、地元の炭鉱の町・大牟田を舞台にした『地の底のヤマ』で日本冒険小説協会大賞を受賞し、12年には同作で吉川英治文学新人賞。14年には『ヤマの疾風』で大藪春彦賞に輝いた。他の著書に『光陰の刃』『バスを待つ男』『目撃』など。最新刊は、雑誌記者として奔走した自身の経験が生んだ渾身の力作長編『激震』(講談社)。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

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西村健
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