宇治抹茶を贅沢に使った「お香」の香り、坐禅を組んで得た境地とは 暮らすように楽しむ京都(1)

宇治抹茶を半分以上も使用、贅沢なお香づくりには、日本の美意識が宿る 坐禅で心身を浄化したところで、さらに感性を研ぎ澄ますべく、お香づくりに挑戦! 会場となった「興聖寺(こうしょうじ)」(宇治市)は、1233年、曹洞宗の開…

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凛とした空気が心地よく、人の流れも心なしか緩やかな冬の京都は、忙しい日常を送るわたしたちが自分と向き合い、心身をととのえ、新しい境地を得られる大切な時間を与えてくれます。もっと身近に体感する「暮らすように楽しむ京都」をコンセプトに、3回にわたって京都での体験を紹介します。第1回は、坐禅およびお香づくりを通して得た“無の境地”

ジョブズも信奉した禅の思想 古刹での坐禅は経営者にも人気

年末年始に「このままでは例年のごとく、時間に追われ実のない1年で終わってしまう」と危機感を抱いた筆者は1月中旬、初めて冬の京都を訪れました。正月気分の艶やかさを脱ぎ去った都大路は観光客もまばら。ふと、いままでのような観光気分でなく、暮らしの中に根付く京都の精神にふれてみたいと、まずは坐禅体験へ向かいました。

米アップルの創業者、スティーブ・ジョブズが生前、禅の信奉者として多忙な合間をぬって京都を訪れていたのはよく知られていますし、国内外の経営者の間では、近年、お寺での坐禅がブームになっています。静謐な古刹で、しかと自分と向き合った先には、何が見えるのか。初めての坐禅に期待と不安を抱え、「萬福寺(まんぷくじ)」(宇治市)へ。

異国情緒を漂わせる羅漢像たち。「羅怙羅尊者(らごらそんじゃ)」(中央)が、自分の腹を切り開いてお釈迦様を見せている姿が目をひく=京都府宇治市「萬福寺」

ひたすら「座る」ことの難しさ 日常では得られない新鮮な感覚に驚き

1661年、中国僧、隠元禅師によって開創された同寺は、中国明朝様式をふんだんに取り入れ、その多くが国の重要文化財に指定されています。

講和上手な吉野弘倫主事の案内に緊張もほぐれ、まずは、二つ折りの座布団の上に足を組んで座ります。「体の中心に鉄の棒1本を通したと思って姿勢を正して。自ずと心もととのうことでしょう」と吉野主事。確かに腰骨を立てて姿勢をよくすると、雑念が消えて頭の中がスッキリ。ふだん忙しなく動き回っているので、座ることに全神経を集中すること自体めずらしく、新鮮な感覚にとらわれます。

ただ、その瞬間に心身をゆだねる心地よさ “全(禅)集中”で得られた究極の癒し

合唱、一礼して坐禅開始。体の前で軽く手を組んで半目を開き、ゆっくり呼吸しながら一切の動きをとめます。張りつめた空気のなか、吉野主事が坐禅中に体が動いた者の肩を叩く棒の警策(きょうさく、けいさく)を肩に乗せながら、ゆっくり床を進むかすかな音だけが聞こえてきます。はじめ、頭の中には、次から次へと煩悩が襲ってくるのですが、それらを無理に振り払うわけでもなく、新しい答えが浮かぶわけでもなく、いずれそれらも消え去り…その瞬間に心身をゆだねる心地良さが何とも言えません。

張りつめた空気の中で、坐禅を組むことで頭の中も研ぎ澄まされる=京都府宇治市「萬福寺」

わずか15分ほどでしたが、終了後はいままで感じたことのない、究極の癒しを体験することができました。

「日常生活でも、ひとつひとつの動作にただひたすら集中して打ち込むことこそ、立派な坐禅の精神です」(吉野主事)。非日常体験だとばかり思っていた坐禅ですが、生きること自体、修行であると考えれば、ぜひ、禅の精神を積極的に日常に取り入れていきたいです。

神社仏閣めぐりをしながら御朱印を集めるのも楽しい。凛とした美しい文字に背筋がのびるよう=京都府宇治市「萬福寺」(中島幸恵撮影)

宇治抹茶を半分以上も使用、贅沢なお香づくりには、日本の美意識が宿る

坐禅で心身を浄化したところで、さらに感性を研ぎ澄ますべく、お香づくりに挑戦!

会場となった「興聖寺(こうしょうじ)」(宇治市)は、1233年、曹洞宗の開祖、道元禅師が開創。曹洞宗最古の寺として知られ、一般向けに坐禅や写経も随時受け付けています。お香の材料の半分以上に、地元特産品である宇治抹茶を使用。京都ならではの何ともぜいたくな楽しみです。

曹洞宗最古の寺である「興聖寺」。境内から眺める庭園は、落ち着いた佇まいをみせている=京都府宇治市

2種の粉に少しずつ水を加えながらダマにならぬよう混ぜ合わせ、指先に力を込めてこねていきます。なめらかなかたまりになったら少しずつちぎり、招き猫やだるまなどをあしらった直径1センチほどの小さな木型に押し込めます。微妙な力加減で何度も仕上がり具合を確認しながら、形をととのえ、慎重に型からはずしてできあがり!

日本の美意識がつまったお香づくりの道具=京都府宇治市「興聖寺」

老若男女問わず、無心になれる楽しみ 新しい自分を発見!?

指先を使った細かい作業ゆえ、少しでも気が散れるのはご法度。さらに1週間ほど乾燥させた後、香炉でじんわり温めます。部屋中に漂う高貴な抹茶の香りが、さまつな考えを払拭してくれるよう。

招き猫やだるま、打出の小づちなど宝づくしのお香が完成。宇治抹茶を使ったぜいたくなお香は珍しいとのこと=京都府宇治市「興聖寺」(中島幸恵撮影)

講師の「INCENSE KITCHEN」代表、後藤恭子さんは、「日本の伝統的な美意識が宿ったお香づくりは、大人も子供も無心になって楽しめます」とすすめています。確かに、指先まで神経を集中させるところが、ふだんの料理と似ているようでまた違う面白さを感じられるでしょう。ひとつの動作、作業に無心になって打ち込むことで、新しい自分と出会える感覚は、坐禅と通じるものがあります。

心を空っぽにしてくれる坐禅とお香づくり。今年は、新しいものを取り入れる前に、まずは自分にまとわりつく余分なものや考えをそぎ落とす!小雪舞う京の空を見上げて、心身をととのえた自分を実感できました。

文/中島幸恵

JR東海が主催する京都の旅「そうだ 京都、行こう。」では2022年冬、『禅と湯 ととのう京都』をテーマに、各種プランを多数ご用意しています。

「ととのう京都 黄檗山(おうばくさん)萬福寺 迫力の梵唄(ぼんばい)と普茶弁当」
【日程】2月1日(火)、15日(火)、3月1日(火)、15日(火)
【内容】僧侶による境内案内、坐禅修行、黄檗宗独自の唄のようなお経「梵唄」を専用席で体感できるほか、中国式精進料理「普茶弁当」をご賞味できます。特別御朱印も授与されます
【旅行代金】8500円

「ととのう京都 宇治抹茶お香づくりと僧侶がご案内する興聖寺」
【日程】2月11日(金・祝)、12日(土)、3月12日(土)、13日(日)
【内容】宇治抹茶を使用したお香づくりの後、僧侶が境内を案内します。
【旅行代金】7500円
上記2プランの問い合わせ先「JR東海ツアーズ ぷらっと旅・コールセンター」
【電話】03‐6860‐1080(午前10時~午後6時)
 
※非公開文化財特別公開、定期観光バス特別コース、事前予約で楽しむ体験プランなど京都デスティネーションキャンペーン「京の冬の旅」は3月21日まで。詳しくは専用サイトおよび駅構内や旅行代理店備え付けのパンフレット等でご確認ください。
※新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府およびお住いの都道府県ならびに京都府の要請など最新の情報をご確認ください。

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