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凛とした空気が心地よく、人の流れも心なしか緩やかな冬の京都は、忙しい日常を送るわたしたちが自分と向き合い、身心をととのえ、新しい境地を得られる大切な時間を与えてくれます。もっと身近に体感する「暮らすように楽しむ京都」をコンセプトに、3回にわたって、京都での体験を紹介します。最終回は、京都ならではの「食」にスポットを当てます

大皿料理をみんなで取り分ける 精進料理のイメージを覆す斬新な食事スタイル

第1回で触れた坐禅体験で「萬福寺」(宇治市)を訪れた際、案内してくれた吉野弘倫主事の話の中に出てきた「普茶(ふちゃ)料理」。聞けば、同寺を開創した中国の帰化僧、隠元禅師が江戸時代初期に伝えたものだそうで、寺での行事や法要の後にふるまわれた食事がはじまりとされています。

「普茶」とは、「普(あまね)く大衆と茶を共にする」こと。ひとつのテーブルに4人が座り、大皿に盛りつけられた料理をそれぞれが取り分け、いたただきます。こういった「普茶料理」の食そのものを楽しむ精神は、これまでの精進料理=修行のイメージを覆し、卓を囲んだ者同士、親睦を深めるスタイルは当時、とても珍しかったようです。

幻想的な日本庭園を眺めながら花を食す…そのお味は!?

今回「普茶料理」をいただいた「閑臥庵(かんがあん)」(北区)は、夜の帳(とばり)がおりるころに訪れるのがおススメ。ライトアップされた幻想的な日本庭園を眺めながら、大皿で盛られた華やかな料理を心のこもったおもなしを受けていただく至福のときを過ごせます。

さて、最初に運ばれてきたのは、季節の野菜の煮つけ、飛竜頭(ひりょうず)などです。飛竜頭、いわゆる「がんもどき」ですね。「普茶料理」は、植物性の食材だけが使われており、出汁も鰹節や煮干しではなく、昆布やしいたけでとっているとのこと。どれも薄味で上品に仕上がっている分、食材の本来のうま味を堪能できます。中でも京人参はほっこりした甘みが感じられ、思わず笑みがぼれます。

次は何と愛らしいピンクのお花の天ぷら!いままで、花を食すと言えば食用菊くらいしか口にしたことがなかったのですが、サクサク、意外にさっぱりとしたお味です。ちなみに、ふつうの天ぷらと違って、衣に下味がついているのが特徴です。

見た目も華やかな普茶料理の数々。一品ずつ、どのような食材が使われているのか確かめながら、じっくり味わいたい。
=京都市北区「閑臥庵」

余すところなく使い切る…ふだんの台所仕事に活かす教訓

「麻腐(まふ)」と呼ばれるおなじみの胡麻豆腐は、「普茶料理」が元祖。本場ならではの濃厚な味わいがたまりません。「雲片(うんぺん)」とは、短冊切りにした野菜を油で炒めてくず粉で煮込んだもの。調理で出た野菜の切れ端も余すところなく細切りにして、ムダにしません。この精神、早速、わが家の台所の教訓となりました。

「雲片(うんぺん)」は、調理の過程で出た野菜の切れ端を炒めて葛あんをかけたもの。ムダにしない精神は、
ふだんの台所仕事でも、取り入れたい=京都市北区「閑臥庵」

植物油多め、しっかりした味付けで、食べごたえ十分!

中でも驚いたのは、「もどき」と言われる魚や肉を使わずにそれらをマネして作る一品です。「鰻の蒲焼もどき」は、すった豆腐に野菜をすりおろして混ぜて形作り、片面に海苔を貼って油で揚げ、さらに照り焼きにするという手の込みよう。確かに食感は鰻のそのもの、再現度の高さに驚くばかりです。

さつまいもと茶そうめんを使って、まるで本物の栗のように見立てた一品。口に入れると、栗のイガのサクサク感と
さつまいものほっこり感で、栗をまるごと食べているようでおもしろい=京都市北区「閑臥庵」

「普茶料理」全般に言えるのですが、一般的な精進料理と違って植物油が多く使われているせいか淡泊な味ではなく、現代人にも好まれるようなしっかりした味付けになっており、食べごたえ十分です。四季折々、旬の新鮮な食材をシンプルな味付けで、いただくことで素材そのもののうま味をグッと引き立てています。

ヘルシーな食材を使っていながら、見た目も胃袋も満足させてくれる普茶料理。心のこもったおもてなしとともに、京都での忘れられない夜となりました。

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魚に生麩や湯葉、おばんざい 「京の台所」...
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