今まで以上に、カレーを味わう店へ変貌
一方で、「映えカレー」などと呼ばれ、写真撮影目当ての客も増えた。
「別に撮影自体がいけないわけじゃないです」。でも、カレーが目的じゃなく、撮影するためだけに来店する客がいたのも事実だった。
「美味しい」「また食べたい」そう言ってもらえることが、店の原点だったから、ほとんど手がつけられていない皿を見るのは辛かった。
「料理人は、喜んで食べてほしいんですよ」。
こうした思いが、店のメニューを見直すきっかけになり、メニューはよりシンプルになった。使う調味料は塩とスパイスのみ、あとは使う食材それぞれの持ち味を引き出して、味の個性を際立たせるのだ。
「スパイシーチキンカレー」(900円、Sサイズ750円)、「ダークポークカレー」(1000円、Sサイズ800円)、「奥八女産熟成イノシシキーマカレー」(1500円、Sサイズ1200円)、「特製チキンビリヤニ」(1200円、Sサイズ950円)の4種類に加え、日替わりカレーもある。
いずれも力強く、肉の個性もしっかり味わえる。そして、ストレートにスパイスと肉の旨みが感じられた。
「根本的にメニューを変えるのは、大変だったけど、新しいレシピを考えるのは楽しかった。やっぱりスパイスカレーが好きなんだなって思いました」。以前のメニューは久保さんがひとりで試行錯誤したものだったが、今回はスタッフの意見も取り入れて、一緒に考えた。
また、福岡でビリヤニが食べられる店は珍しい。カレーというよりも、スパイスライスといった印象で、大ぶりのチキンもたっぷり入っている。付け合わせとして定番の「ライタ」と呼ばれるヨーグルトソース、スパイシーチキンカレーのグレイビーソースもついているので、このひと皿でいろいろな食べ方、味わう楽しさが広がる。
また、ひと皿が食べきれないという人のためにSサイズができたのもうれしいニュースだ。
「これからは、もっとスパイス料理にチャレンジしたい」。久保さんは、自身の料理の枠を広げたいと、新たに『夜のクボ』をオープンした。コロナ禍の現在は休業中だが、スパイス料理でお酒が楽しめる昼のカレーとは全くスタイルの違う店だ。
店主の久保さんのワンオペなので、カウンターのみの不定期営業だが、社会の状況を見ながら、始動する予定なのでクボカリーのSNSに注目だ。
アルコールメニューも豊富で、好みのスパイスとお酒を楽しめる。より、大人な『クボカリー』のスタートで、福岡のスパイス料理はいっそう深みを増しそうだ。
■クボカリー 大名店
[住所]福岡市中央区大名1-4-23 ロワールマンション大名101
[電話番号]092-732-3630
[営業時間]11時~15時半
[休日]水
[交通]福岡市営地下鉄赤坂駅から徒歩5分
撮影/松隈直樹 取材/牛島千絵美